野楽力研究所

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東京都薬草園・・・令和4年7月27日

 暑い日差しの中、薬草園を訪れました。訪問客はほとんどなくゆっくり観察できました。木陰のある林もありますので、大丈夫です。この時期でしか見られないカワミドリ、ニンジンボク、ミソハギ、タバコの花が咲いています。今日の様子です。

(↑上の写真)左=薬草園入口、中=キクイモモドキ、右=コガネバナ

(↑上の写真)左=クロホオズキ、中=コオニユリ、右=オニユリ

(↑上の写真)左=オミナエシ、中=メハジキ、右=オオケタデ

 オオケタデ(大毛蓼)はタデ科イヌタデ属。「ウィキペディア」など各種Webによると「熱帯アジア・東南アジアの原産。日本へは江戸時代に渡来し、現在では日本各地に野生化している。背丈ほどに育つ大きなタデで、毛で覆われているので大毛タデ(大毛蓼)といわれる。マムシの解毒剤や毒虫や化膿性の腫れ物などの、民間薬として利用された」ということです。緑の草原で背が高く赤い花を垂れ下げているので目立ちますので、立派な花、と子ども心に思っていたものです。

(↑上の写真)左=タバコ、中=ノゲイトウ、右=カラスビシャク

 タバコ(煙草)はナス科タバコ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「南米熱帯地方原産とされる多年草。温帯に植えると1年草になる。葉にはニコチンを含み、喫煙のため南米先住民に古くから用いられていたが、1518年頃スペインの宣教師によってヨーロッパにもたらされ、急速に世界中に広まった」という。その一環で日本へももたらされた。その様子を芥川龍之介著『煙草と悪魔』より引用します。面白いので今回も再掲しました。「悪魔はイルマン=修道士=の一人に化けて、フランシスコ・ザビエルと一緒に日本へやって来た。日本での退屈な時間に園芸を始めた。持ってきた種子を蒔いて育てたものは、茎の先に漏斗のような形をした薄紫の花をつけた。悪魔は骨を折っただけに、この花の咲いたのが、大変うれしかった。と、そこに通りかかった牛商人が『もし、お上人様、その花は何でございますか』と問うと、上人に化けている悪魔は『この名だけは教えられない』という。悪魔は『三日の間に誰かに聞いてもいいですよ。この名が当たったら、これをみんなあげますよ。その他にお酒なども』という。『賭けですよ』ともいう。悪魔は『もし当たらなかったら、あなたの体と魂をもらいますよ』と右の手をまわして帽子を脱いだ。三日目の晩、牛商人は、もくろんでいた計画を実行した。即ち、牛の尻を思い切りたたいて畑の中に追い込んだ。けたたましい牛の鳴き声と蹄の音に、寝込んでいた悪魔はびっくりして窓を開け『こん畜生、何だって、おれのタバコ畑を荒らすのだ』と怒鳴った。牛商人は、首尾よく、タバコと云う名が分かり、言い当てて、悪魔の鼻を明かした。悪魔は敗北した。が、それ以後、日本全土にタバコを普及させることができ、日本を堕落させることにおいては、悪魔としては勝利した(一部翻案)」――タバコには、こんな裏話があったんですね。

(↑上の写真)左=ミソハギ、中と右=セイヨウフウチョウソウクレオメ(白花と赤花)

 ミソハギ(禊萩)はミソハギミソハギ属。日本各地及び朝鮮半島に分布し、山野の湿ったところに生える多年草という。ちょうど旧盆の頃咲く(地域によって多少のずれがあります)ので盆花とされ、ご先祖が戻ってこられる依り代として用いたり、禊萩を濡らして払い、その雫で禊(みそぎ)をしたり、供え物を清めたりした、ということです。これらのことから、和名禊萩の謂れはたくさんある中で、禊に用いられた萩に似た花なので「みそぎはぎ(禊萩)」と言われていたものが略されて「ミソハギ」になったというのが一番ふさわしい謂われではないかと思いますがどうでしょうか。

(↑上の写真)左=センニンソウ、中=ヤイトバナ、右=ソクズ

(↑上の写真)左=ヤブラン、中=クルマバナ、右=マルバヤブマオ

(↑上の写真)左=イヌザクラ、中=クララ、右=シロヤマブキ

 クララ(眩草)はマメ科クララ属。ウィキペディアによると「本州、四国、九州、中国大陸。日当たりの良い山野などに生え、大株になって自生する」という。ここ薬草園でもあちこちに点在して株を作っています。「全草有毒で、根の部分の毒性は強く、人では口にすると死に至るということであり、放牧地などでは牛も食べないので、このクララが大株を作って残っている光景が広がっていた」といわれます。そのため「クララのみを食草とするオオルリシジミというシジミチョウ(美しい青い蝶)には絶好の繁殖地となっていたのですが、放牧地が放棄され、草が生い茂り、クララも減少するとオオルリシジミは激減し、生息地域が狭まり、今では絶滅危惧種になっている」ということです。和名クララ(眩草)はAPG牧野植物図鑑スタンダード版によると「眩草(くらくさ)の略で、根汁はひどく苦くて目がくらむほどの意。根は苦参という生薬として駆虫薬として用いられる」ということです。

(↑上の写真)左=ノグルミ、中=ゴンズイ、右=イヌマキ

(↑上の写真)左=夏空の広がる園内、中と右=木陰のある園内雑木林