野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

美し森・・・令和4年7月11日

 美しの森は、諸国の神々が瑞穂の国の中ほどにあるここ斎の杜(いつくしのもり)に年に一度集まり国を治める話し合いをしたということですが、斎の杜がいつしか美し森と呼ばれるようになったという謂れのあるところです。傍の湿地では、九輪草が咲き終わり、今はコバイケイソウが咲いています。今日の様子です。

(↑上の写真)左=登山口、中=ウツボグサ、右=ノハナショウブ

 ウツボグサ(靭草)はシソ科ウツボグサ属。日本各地の日当たりのよい山野の草地に生える多年草。『牧野富太郎植物記2』によると「茎はシソ科なので四角で丈夫。花穂の形が矢を入れる靭に似ているので靭草と言われる。この花穂が夏には枯れてそのまま立っているので夏枯草(かこそう)と呼ばれる」とのことです。澤田ふじ子著『無明記』には、寂し気な花として靭草が出てきます。知多半島佐治水軍を率いる父の優柔不断により妻(江、小説では小督=こごう)は離縁し三代将軍家光の生母にもなるが、残された娘二人は寂しい人生を送ることになる。「姉(おきた)は靭(うつぼ)の花が好きでございました。その日も、姉は婢のはぎを供に連れて、靭の花を摘んでくると、わたくし(おぬい、盲目)の居間の床にある胡銅の花生けにたくさん活けてくれました。明り障子のそばにそれが置かれると、花の色が、わたくしの眼に、ぽっと見えるようでございました」と。人生、優柔不断は良い結果を生まないようでした。

(↑上の写真)左=ヤマオダマキ、中=ニガナ、右=シロニガナ

(↑上の写真)左=ヒヨドリバナ(これからが開花の時期)、中=ノコギリソウ、右=タカトウダイ

 ヒヨドリバナ(鵯花)はキク科ヒヨドリバナ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると「北海道から九州、さらに朝鮮半島、中国大陸の温帯から暖帯に分布し、山地の乾いたところに生える多年草。高さ1~2m。フジバカマに似ているが、地下茎は横に這うことは無い。香気は少ない。花は夏から秋。和名はヒヨドリが鳴く頃咲くことに因む」とあります。また、諏訪教育会著「諏訪の植物」には「ヒヨドリバナは、山地に生える多年草で、葉に柄があり、対生。葉が4枚(3枚也5枚のものもある)あって輪のようにつくヨツバヒヨドリがあり、山地の湿地に生え、葉に柄がなく対生のサワヒヨドリがある」ということです。「Web:e-yakusou.com」に、ヒヨドリバナの名の由来をヨツバヒヨドリの項で解説して「花は、小さな管のように集まり、それが枯れると良く燃えて、火熾し(ひおこし)の材料になるから、火熾し(ひおこし)から、火を取る(ひをとる)に転嫁して、ヒヨドリの名になった」とあります。ヒヨドリの鳴く頃に咲くからか、火起こし(火熾し)からか、どうでしょうか。

(↑上の写真)左=ニッコウキスゲ、中=チダケサシ、右=オオヤマフスマ

(↑上の写真)左=ノリウツギ、中=シモツケ、右=リョウブ

(↑上の写真)左=美し森(1542m)、中と右=コバイケイソウ

(↑上の写真)左=クリンソウ(実)、中=サワギク、右=ノアザミ

(↑上の写真)左=工事で直登できず左の巻き道、中=カラマツ、右=カワラマツバ