野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

山梨県森林総合研究所・・・令和4年5月10日

 山梨県森林総合研究所北杜市小淵沢町にあり、愛称「シミック八ヶ岳薬用植物園」と呼ばれています。標高950m、9、5haの敷地に300種類の植物が植栽されています。今は春の花と夏の花が入れ替わる時期なので花の種類は、多くはありません。今日の様子です。

(↑上の写真)左=入口、中=山の幸展示館、右=アジュガ(西洋ジュウニヒトエ

(↑上の写真)左=斑入りアマドコロ、中=ジャーマン・カモミール、右=コモンタイム

(↑上の写真)左=アキグミ、中=エニシダ、右=フサスグリ

 エニシダ(金雀児・金雀枝・金雀花)はマメ科エニシダ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によるとヨーロッパ原産で延宝年間(1673~1681年)に中国を経て渡来した落葉低木という。Web:植木ペディアによるとホウキのような樹形に育つのが基本であり、ヨーロッパではその様子を魔女が使う箒に例え、エニシダが茂る家は主婦が強いとすると言い伝えがあるという。また、花の色は黄色が基本だが、赤が入る品種(ホオベニエニシダ)や乳白色が混じるものなど園芸品種は豊富にある、とのこと。芥川龍之介著『神神の微笑』には「彼(神父オルガンティノ)は南蛮寺の内陣のフレスコ画を見ていた。画中ではサン・ミグエルと地獄の悪魔がモーゼの屍骸を奪い合っていた。しかし、今夜は朧げな光の加減か妙に普段よりは優美に見えた。それは又事によると、祭壇の前に捧げられた、瑞瑞しい薔薇や金雀花(エニシダ)が、匂っているせいかも知れなかった。」(一部翻案)と描写されています。

(↑上の写真)どれもアキグミの花の様子

 アキグミ(秋茱萸)はグミ科グミ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によれば、北海道西部から琉球列島まで、および朝鮮半島、中国、ヒマラヤ、カラコルムの暖帯から温帯の山野の水辺などに生える落葉低木という。葉は互生、葉には銀白色の星状鱗片(星状のうろこのような細片)が密生して、銀白色に光っているのが特徴です。花の色は、白色から黄色に変わり銀白色の鱗片に覆われる。果実は丸く、秋に赤く熟し、食べられる。山中では、実は鳥や猿などの大切な餌となっていますね。ナツグミとの分かりやすい区別点は、ナツグミは実の形が細長く、花の後すぐに5・6月に熟すが、アキグミは実の形が丸く、秋にならないと熟さない、ということ。

(↑上の写真)どれもゴヨウアケビの花 左=雄花、中=雌花、右=雌花と雄花

(↑上の写真)左=クサノオウ、中=ノボロギク、右=モミジガサ

(↑上の写真)左=オニグルミの雄花の穂、中=カリン、右=ブルーベリー

 カリン(花梨、榠樝)はバラ科カリン属からAPG新分類ではバラ科ボケ属に変更になりました。中国東部原産の落葉高木で日本への渡来時期は不明とのこと。樹皮は緑褐色で縞状に剥げ落ちた跡が残り、ナツツバキ(シャラノキ)に似ています。西洋ナシのような形の実(梨果)の芳香は素晴らしく、食べられますので秋の収穫を楽しみに待ちたいと思います。江戸時代、屋敷の表門には「カリン」(借りん=借りない)の木を植え「お金は借りません」の意志表示をし、背戸(裏門)には「カシ」(貸し=貸す)の木を植え「お金は貸すほどあります」という意思表示をしたそうです。赤い花は借金まみれの赤を象徴し、そうはならじ、の意思表示をしているということでしょう。江戸時代の洒落た高度な庶民文化が感じられますね。

(↑上の写真)左=マムシグサ、中=カキドオシ、左=展望台からの甲斐駒・南アルプスの眺望