野楽力研究所

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東京多摩地区街中自然観察・・・令和4年5月3日

 大勢の人たちが自然の中に繰り出しています。そういう時には遠慮して家の周りの街中自然観察をしてみたいと思いました。園芸品種が多く特定が難しいですが、自然のものも多く見られました。今日の様子です。

(↑上の写真)左=東京多摩地区の新興住宅地、中=クレマチス、右=オオカナメモチ

(↑上の写真)左=ノムラカエデ、中=カナメモチ、右=ブルーベリー

(↑上の写真)左・中=モッコウバラ(黄花・白花)、右=フイリタニウツギ

 モッコウバラ(木香薔薇)はバラ科バラ属。中国原産の蔓状低木。江戸時代中頃享保年間に渡来という。白花と黄花があり、白花は好い香りを漂わせますが、黄花は香りが無いのが残念です。この時季、満開を過ぎましたが、白花の残り香?を味わってください。バラ科と言っても刺が無いので世話は楽です。

(↑上の写真)左・中=ドイツアヤメジャーマンアイリス)、右=夏ミカン

(↑上の写真)左=クサノオウ、中=ナガミヒナゲシ、右=アメリカフウロ

 クサノオウ(草の黄)はケシ科クサノオウ属。日本の低地の日向に生える越年生草本クサノオウの名の由来は、➀草を傷つけると黄色い汁をだすので「草の黄」、②この草を乾燥したものは生薬名「白屈菜(はっくつさい)」といい、中国ではアヘンの代用にしたということから気分爽快にする麻薬ということで「草の王」、③黄色い汁は有毒成分を含み、それゆえ薬にもなるという皮膚疾患に有効な薬草という意味で「瘡(くさ)の王」という、3つの説が有力のようです。しかし、皮膚の弱い人は、かぶれることがあるので、触れることは避け、強い成分も含まれているということですので素人判断での扱いは非常に危険です。間もなく花が咲き終わった後に種子ができますが、この草は「アリ撒布植物」といわれています。種子にアリの好物のエライオソームという脂肪体をつけてアリをおびき寄せます。アリは巣までエライオソームの着いた種子を運び、エライオソームを舐めつくして種子が不要となると種子を巣の外に出します。そこで種子が発芽すれば子孫を増やし、広げるというクサノオウの植物としての目的は達成さることになるというわけです。

(↑上の写真)左=ユウゲショウ、中=コヒルガオ、右=ブタナ

 ブタナ(豚菜)はキク科ブタナ属。ヨーロッパ原産で日本には昭和8年に札幌市で発見されタンポポモドキと呼ばれていましたが、翌年には六甲山で見つかり、ブタナと正式に命名されたということです。それ以来、北海道から本州の広い範囲に分布するようになった多年草植物。ブタナ(豚菜)はフランスでの俗名 Salade de porc(ブタのサラダ)を翻訳したものだそうです。綺麗なタンポポに似た花をつけるこの草には(豚に失礼かもしれませんが)豚菜よりタンポポモドキの方が相応しいように思いますがどうですか。野楽力研究所としてはタンポポモドキを普及させたいと思います。タンポポモドキは花茎(花をつけている茎)が二股に分かれ1本の花茎に2つの花をつけているのが特徴です。また、葉は夏でもロゼット状で地面にへばりついています。

(↑上の写真)左=ムラサキカタバミ、中=イモカタバミ、右=ハハコグサ(左側=チチコグサ)

 ムラサキカタバミ(紫片喰)はカタバミ科カタバミ属。南アメリカ原産で、江戸時代末期に渡来した帰化植物という。要注意の外来植物になっています。かわいらしい、ある意味上品な花なので庭に植えたくなります。種子は作りませんが、鱗茎の周りに多数できる子球とか木子と呼ばれる子どもの球根によって増えます。一度庭に植えるとあちこちにこの子球が散らばり、その繁殖力は凄まじく、撲滅困難となります。また、橙色のサビ病に取り付かれると根こそぎ除去しないと撲滅できず、毎年、発生し広がるので注意が必要です。ムラサキカタバミとは紫色の花のカタバミということです。カタバミは片喰で、カタバミの体内時計によって就眠活動をし、昼を過ぎると葉を閉じます。その様子から半分葉が喰われたようだというので片喰と言われるというのが定説のようです。モカタバミ(芋片喰)は、カタバミ科カタバミ属。南アメリカの比較的標高の高い地域が原産。日本へは、第二次世界大戦後に観賞用として導入されて以降、国内に広く帰化している、とのこと。ムラサキカタバミに似ていますが、区別点は、花弁の中心部が、娼婦が紅を点したように赤く彩られているところです。

(↑上の写真)左=キツネアザミ、中=ハルジオン、右=ノゲシ(ハルノノゲシ

 ハルジオン(春紫苑)はキク科ムカシヨモギ属。APG牧野植物図鑑によると北アメリカ東部原産で、日本へは大正年間に渡来し、都会地を中心に帰化した野原や道端に生える越年草という。ハルジオンは4月初めから咲きはじめますが、ヒメジョオンは5月中頃から咲きはじめます。それ以降、両者とも咲きますので、区別がなかなか難しいです。強いて言えば、若葉の基部が耳型で茎を抱くような感じならハルジオン。茎を潰して潰れるようだったら中が中空ということですから、ハルジオンと同定できます。ハルジオン(春紫苑)はジオン(紫苑)ですが、ヒメジョオン(姫女苑)はジョオン(女苑)です。お姫様なので「女の苑」即ち女苑にいらっしゃると覚えておけば間違えありませんね。