野楽力研究所

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小石川植物園・・・令和4年4月26日

 ハンカチノキとヒトツバタゴ(ナンジャモンジャノキ)が見頃というので訪ねてみました。オオカナメモチ(絶滅危惧種)も満開です。植物園全体の足許には外来種のオオアマナがあちこち逸出繁殖しています。今日の様子です。

(↑上の写真)左=旧東京医学校、中=ハンカチノキの花弁(実は苞葉)が落ちたもの、右=ハンカチノキの花

(↑上の写真)どれもハンカチノキの花

 ハンカチノキは、中国雲南省四川省原産の落葉高木。パンダの発見者でもある生物学者で神父のアルマン・ダヴィッド(1826年~1900年)が発見したということです。分類は分類法によって異なり、ハンカチノキ科・ダヴィディア科・ミズキ科・ヌマミズキ科などさまざま。合意されるまではハンカチノキ科としておきましょう。花弁(花びら)のように見えるものをハンカチと見立てて名づけられたものですが、これは花弁ではなく蕾を包むように護っている葉が変形した苞葉が発達したものということです。日本に移入されたのは小石川植物園が最初で、それも最近のことで、Web「森と水の郷あきた」によると1952年ということです。珍しい木であることには違いありませんから、ぜひ、この機会にご覧ください。

(↑上の写真)どれもヒトツバタゴ(ナンジャモンジャノキ)

(↑上の写真)どれもヒトツバタゴ(ナンジャモンジャノキ)

 ヒトツバタゴ(一つ葉田子)はモクセイ科ヒトツバタゴ属。「APG牧野植物図鑑スタンダード版Ⅱ」によると本州中部の木曽川流域と対馬に生え、さらに朝鮮半島、台湾、中国の暖帯に分布する雄性両性異株の高さ10mの落葉高木という。名前がユニークですが、一ッ葉のタゴ(トネリコの地方名)ということです。タゴとはバットにするマルバアオダモが属するトネリコ属のことで、トネリコ属は普通、葉のつき方が奇数羽状複葉ですが、ヒトツバタゴは、複葉でなく単葉なのでヒトツバタゴといわれ、属名もヒトツバタゴ属になっているということです。対馬では、晩春には、湾を囲むようにヒトツバタゴの白い花が海面に映えることから「ウミテラシ」とも呼ばれているそうです。

(↑上の写真)どれもオオカナメモチの花

 (4月1日にも議論しました。)オオカナメモチ(大要糯)はバラ科カナメモチ属。本州西部、奄美大島、徳之島、西表島から台湾、中国南部にかけての暖帯を中心に分布する常緑高木。絶滅危惧種CR。若葉は紅葉を帯びるが落葉する時にも紅葉する。花は散房状で上部が平たんな円錐花序。オオカナメモチという和名のカナメモチの由来は、その材を扇の要(かなめ)に使い、モチノキ(黐)に外観が似るためとされる、といいます。しかし、牧野新日本植物図鑑で牧野博士は「要モチはこの材で扇の要を作るからであるというが、これは誤りで、恐らくアカメの転訛と思われる」と書かれています。この転訛説もイマイチの感じです。新説ですが、カナメは銅芽ではないでしょうか。赤く黒ずんだ新芽の色を銅の色に見立てて銅芽(かなめ)と呼んだという説はどうでしょうか。また、オオカナメモチは高木で、垣根などに使われる小高木のカナメモチより大きいのでオオと名づけられたのは普通の名づけ方でしょう。

(↑上の写真)左と中=ガクウツギ、右=ミツバウツギ

(↑上の写真)左=赤花オドリコソウ、中=白花オドリコソウ、右=オオアマナ

(↑上の写真)左と中=フタリシズカ二人静)、右=(参考)ヒトリシズカ(一人静)

 二人静謡曲にもある通り、静御前と憑依した静御前の二人の意味ですね。謡曲二人静」から引用すると春まだ浅い雪の消え残る吉野菜摘川の辺り、勝手明神の神職の命令で正月七日の神事に供える若菜を摘んでいる女の前に一人の里の女が現れ、罪業消滅のため社家の人々に写経供養を頼む由を伝え、もし疑う人があれば、あなたに取り憑いて名を明かそうと告げて消えうせる。驚いて立ちかえった女が報告しながらも「誠しからず候程に・・・」と言いかけるや何者かの霊が憑き菜摘女の気色が変わり「何まことしからずとや、うたてやな・・・」と咎め悲しむ。神職の誰何に判官殿に仕えたものと答え、神職は次々に名をあげ、静の霊と察し、静なら舞の上手と所望すると、女は、昔着た舞の装束を勝手明神に納めてあるといい、宝蔵を開けるとその通りで、霊の憑いた女に着せる。すると同装の静御前の霊が現れる。影の形に添うごとく二人の女が並び立ち、判官失脚の次第、吉野落ちの有様を語り、頼朝の前で舞った昔を偲び、悲運の義経を追慕しつつ舞い、山の桜が松風に花の雪と吹き散らせれるように、憂き事の多いのが世の習いと述べ、回向を頼んで消え去ったというものです。ヒトリシズカ(一人静)が、なぜ、シズカゴゼン(静御前)と命名されず、一人静となったのかは、謡曲二人静の方が先にあって、有名だったからではないかと想像しますが、如何でしょうか。因みに謡曲観阿弥世阿弥の活躍は室町時代、園芸が盛んだったのは江戸時代後期ですね。

(↑上の写真)左=タニウツギ、中と右=ハナヒョウタンボク

 ハナヒョウタンボク(花瓢箪木)はスイカズラスイカズラ属。APG牧野植物図鑑スタンダード版によると、北東アジアに広く分布し、日本では青森県岩手県群馬県、長野県に限定分布する落葉低木という。(以下各種Webによると)花はスイカズラに似ている。新しい花は白色(銀色)で、古くなると金色に変るので金銀木ともいわれる。果実は赤い液果で2つが合着して瓢箪の形に見える。日本では環境省レッドデータでは絶滅危惧IB類(EN)に指定されているが、北米やニュージーランドには帰化している。果実は、人間には有毒であるが、鳥にはよく食べられ、鳥によって種子が散布され、林床に一面に繁茂して在来植物に脅威を与えている。日本では絶滅危惧種であるが北米では有害植物になっているとのこと。

(↑上の写真)左=ヤマアイ、中=スイバ、右=スイバの葉のつき方