野楽力研究所

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東京都薬用植物園・・・令和4年3月25日

 久し振りの薬用植物園。ボケ、トサミズキ、雑木林でカタクリ、シュンランの群落が満開です。これからが観賞の好適期です。西武線東大和市駅下車、南に徒歩3分です。

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(↑上の写真)左=入口、中=ボケ、右=クサボケ

 ボケ木瓜)はバラ科ボケ属。中国原産、日本への渡来時期は図鑑によって平安時代、江戸時代というものがあります。上の写真のボケは花の色が緋色なので「ヒボケ」白色だったら「シロボケ」両方混ざっていたら「サラサボケ」というそうです。ボケは漢名木瓜(モッカ)が訛ったものという説がありますが、どうでしょうか。クサボケ(草木瓜)もバラ科ボケ属。図鑑によると「関東地方以西、四国、九州の日当たりのよい山野に生える日本在来の落葉低木。花は春、葉よりも先に開き、雌雄の別がある。和名は木瓜に似て小低木なので草と名づけられた」という。

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(↑上の写真)左=ヒュウガミズキ、中=トサミズキ、右=ユキヤナギ

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(↑上の写真)どれもカタクリ

 カタクリ(片栗)は、ユリ科カタクリ属。『APG牧野植物図鑑Ⅰ』によると「日本各地、およびロシア極東の温帯から暖帯に分布する山中に生える多年草。和名片栗は栗の子葉の一片に似ているから。古名堅香子(カタカゴ)」とあります。「万葉集 植物さんぽ図鑑」によると「(カタクリの)語義は印象的な花(から)ではなく、葉だけに由来する。葉に鹿の子模様があって幼葉は片葉しかつけないから片鹿の子と名づけられたのです。現在名のカタクリは、東北地方の方言名カタコユリの訛りで、デンプンが取れる鱗茎を栗に見立てたのかもしれません。」とあります。名づけられた由来が二通り出されていますが、どちらがいいでしょうか。なお、万葉集カタクリ(古名:堅香子=カタカゴ)を詠んだものは「もののふの八十娘子(やそをとめ)らが汲みまがふ 寺井(てらゐ)の上の堅香子(かたかご)の花」(万葉集19巻4143 大伴家持)この一首だけだそうです。現代語訳=「春になって大勢の娘たちが寺の井戸の水を汲みに来る。その近くには堅香子の花が咲き乱れており、娘たちの様子も咲き乱れる花のようだ」……写真のカタクリの群落のようすは、飛鳥人が見たものときっと同じですね。今が観賞に出掛けるチャンスです。お奨めです。

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(↑上の写真)左=アミガサユリ(バイモ)、中=アマナ、右=トキワイカリソウ

 アミガサユリ(網笠百合)はユリ科バイモ属。別名バイモ(貝母)。別名バイモは漢名貝母を音読みしたもの。原産地は中国で、江戸時代生薬として渡来。貝母の名は、地下にある鱗茎が二枚の厚い貝状になっており、二枚貝のようだから名付けられた。和名の網笠百合は、花被の内側に紫色の網の目の紋があるのに因む。茎の上部の葉は先がかぎ形に曲がる。茎葉とも夏に枯れる(各種図鑑、Web参照)。朝井まかて著『類』に「濃淡の緑の中で山百合や貝母(ばいも)百合が揺れ矢車草や仙翁、石竹も咲いている。同じ色の花はない。それぞれが思い思いに咲き、その合間から紅葉葵や銭葵、向日葵、ダアリアたちが我こそはと自己主張する。群れに控えめに寄り添っているのは、鶏頭や虎ノ尾、花魁草(おいらんそう)だ。」と、森鴎外の末息子の類は、庭の花々を慈しみ、愛でたのでしたね。

 アマナ甘菜)はユリ科アマナ属。『APG牧野植物図鑑スタンダード版Ⅰ』によると「福島県以西から九州、および朝鮮半島、中国の暖帯に分布。日当たりの良い原野に生える多年草。花は春、花茎は一本、まれに2本。中ほどに長さ3cm位の葉状苞を3枚つけ、先に白花を単生する。夏に地上部は枯れる。」とあります。Web「ウィキペディア」によると「名前は(葉ではなく)球根が甘く、食用にすることに由来する。別名をムギクワイ(麦慈姑 )といい、これは球根の形をクワイになぞらえたもの。調理法もクワイと同様である 。」とあります。

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(↑上の写真)左と中=シュンラン、右=フキノトウ

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(↑上の写真)左=ヒトリシズカ、中=茶色のミミガタテンナンショウ、右=緑のミミガタテンナンショウ

 ミミガタテンナンショウ(耳形天南星)はサトイモ科テンナンショウ属。『APG牧野植物図鑑スタンダード版Ⅰ』によると「東北地方の太平洋沿岸から関東地方、四国西南部の林下、林縁に生える多年草で日本在来種という。また、田中肇著『花の顔』によると(一部翻案)「匂いに誘われてか、キノコバエが苞の中に入っていくが、このハエはもう引き返せない。苞の内壁はつるつるで、花軸を足掛かりに花穂を登っても、上には鼠返しのような付属体があって行く手を遮られてしまう。雄株の苞には下に小さな出口があり、この出口からハエはもがいてようやく花粉まみれで脱出することができる。このハエが雌株の苞に入り、花穂の上を歩き回れば、雌花はめでたく受粉する。ところが雌株の苞には雄株のような出口がないので、花粉を運んで行ったハエは苞から抜け出せずに死んでしまう。(オスはどの世界も悲壮ですね。)テンナンショウの仲間は球根のサイズに応じて性転換し、球根が小さい(栄養が足りない)と雄株に、(栄養が豊富で)大きくなると雌株になる。」という。変わった植物ですね。LGBTなどというややこしい問題は起きないでしょうね。

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(↑上の写真)左=ニリンソウ、中=アネモネ・ブランダ、右=ヒマラヤユキノシタ

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(↑上の写真)左=サンシュユ、中=キブシ、右=ウグイスカグラ

 キブシ(木五倍子)はキブシ科キブシ属。「APG牧野植物図鑑スタンダード版」によればキブシは、北海道西南部から九州までの山地に生える落葉低木。どうしてこの木を「キブシ=木五倍子」というのかが、なかなか分かりづらいです。キブシは「木のフシ」という意味のようです。それでは「フシ」とは何か? Web「ヤフー知恵袋」によると(その他の資料も使い、かなり翻案しています)フシは漢字では『五倍子』と書き、この五倍子(フシ)は、ヌルデの若葉に寄生したヌルデシロアブラムシから、植物体が自身の保護のために、保護成分であるタンニン酸をその部分に集中するために組織が膨らんだもので、いわゆる虫こぶ(虫えい)のことです。若葉にできた癌のようなもので実(み)ではないということです。虫こぶの部分が(何の?多分実の)五倍の大きさになるところから五倍子の名がついたようです。 元々漢方薬の名前ですから日本で付けた名前ではありません。つまり、ヌルデにできた虫こぶ(虫えい)の大きさが実の5倍の大きさになるということから五倍子と言うようになった、ということのようです。キブシは、お歯黒の黒い染色剤として使われたヌルデの五倍子(和名「ふし」)の代用品として使用されたので木の五倍子、即ち、木五倍子(キブシ)と命名された、といいます。しかし、ヌルデも草ではなく木であることが気になりますね。

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(↑上の写真)左=アブラチャン(雄花)、中=モミジイチゴ、右=アンズ