野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

麦草峠野草園・・・令和3年8月5日

 八ヶ岳の北側、メルヘン街道の麦草峠にあるヒュッテが世話している野草園です。海抜2127mの清々しい高原。アサマフウロアキノキリンソウが一面に咲き誇っています。シャジクソウ、トンボソウ、アオヤギソウといったちょっと希少なものも見ることが出来ました。今日の様子です。

f:id:noyama_ko:20210809144303j:plain
f:id:noyama_ko:20210809144313j:plain
f:id:noyama_ko:20210809144322j:plain

(↑上の写真)左=麦草峠の標識、中=野草園の入口、右=ヒュッテの上に広がる夏空

f:id:noyama_ko:20210809144517j:plain
f:id:noyama_ko:20210809144526j:plain
f:id:noyama_ko:20210809144541j:plain

(↑上の写真)左=イブキジャコウソウ、中=アキノキリンソウ、右=イブキトラノオ

 イブキジャコウソウ(伊吹麝香草)はシソ科イブキジャコウソウ属。四国、沖縄を除く日本各地と北東アジアの温帯に分布し、山の日当たりのよい岩地、ときに平地や海岸の崖にも生える小低木ということです。草本と思ったのですが、よく見ると確かに木本、しかも常緑で冬を越すということです。滋賀県伊吹山に多く、麝香の芳香がするというので名づけられたそうです。葉茎が芳香を放つということですから地面に這いつくばって鼻を近づけるのですが、上手く嗅げていません。みなさんはどうでしょうか。なお、イブキトラノオのイブキも伊吹山のことです。

f:id:noyama_ko:20210809144646j:plain
f:id:noyama_ko:20210809144657j:plain
f:id:noyama_ko:20210809144707j:plain

(↑上の写真)左=キバナノヤマオダマキ、中と右=キンバイソウ

 キンバイソウ(金梅草)はキンポウゲ科キンバイソウ属。本州の中部地方から滋賀県伊吹山の山地に生える多年草。根生葉には長柄がありますが、茎につく葉は柄がありません。花弁のように見えるのは萼片が変化したもので5枚。中心部に集まっているものが花の本体で、黄色い一見雄しべのように見えるものが本来の花弁ということです。花は豪華絢爛でお花畑の中でも目立って鮮やかです。金の盃になみなみと酒を満たしたように感じます。ですから金梅草より金盃草の方が名前としてふさわしいように思いますが、どうでしょうか。

f:id:noyama_ko:20210809145141j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145154j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145203j:plain

(↑上の写真)左=アオヤギソウ、中=アオヤギソウの花、右=シュロソウの花

 アオヤギソウ(青柳草)はシュロソウ科シュロソウ属。中部以北の湿り気のある草原や林の中に生える根茎は有毒の多年草。青柳草の青柳とは、花色と葉状を青柳に見立てたものというのが通説のようですが、どうでしょうか?。アオヤギソウを含めて,シュロソウ、ホソバシュロソウ,タカネアオヤギソウなどのいわゆるシュロソウ属は、Web「撮れたてドットコム」によるとアオヤギソウを基本種にすべて同一種の中の変種と考えられているそうで、その境界は、はっきり区別できないそうです。なお、シュロソウ科のシュロソウとは、根元の葉鞘に棕櫚の毛のような繊維がついているので名づけられたということです。

f:id:noyama_ko:20210809145321j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145333j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145349j:plain

(↑上の写真)左=オトギリソウ、中=ウツボグサ、右=シロバナウツボグサ

 オトギリソウ弟切草)はオトギリソウ科オトギリソウ属。日本各地の山や野原に生え、変種の多い多年草ということです。弟切草の謂れとしては、松田修著「花の文化史」によると「昔、花山院の朝に晴頼(せいらい)と呼ぶ一人の鷹飼いがいた。そのわざ、まさに神に入るというほどで、もし鷹が傷を負うようなことがあると、秘かにどこからか草を取ってきてこれにつけた。すると不思議にもたちまちその傷は治る。人はその草の名を乞い問うたが、晴頼はこれを秘して決して人に教えなかった。ところが家にいる晴頼の弟が、こんな名薬を独り秘めておくべきではないと、秘かにこれを洩らした。晴頼は大いに憤ってついにこの弟を殺してしまった。これよりこの草を誰いうことなく弟切草と呼ぶようになったといい、弟切草の葉の黒点は弟を切った時の血潮が残ったものであるとも語っている」とあるのに基づいているようです。

f:id:noyama_ko:20210809145502j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145517j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145531j:plain

(↑上の写真)左=コバイケイソウ、中=シャジクソウ、右=ゴマナ

 シャジクソウ(車軸草)はマメ科シャジクソウ属。Web「山川草木図譜」によるとシャジクソウ属というのはツメクサの仲間で「シロツメクサ」「アカツメクサ」などの身近な雑草ですが、それらはみな外来の帰化植物で、日本在来種はこの「シャジクソウ」だけ、さらに分布は、北海道、宮城県群馬県、長野県のみに偏在している、ということです。ですから、なかなか見られませんでした。また、車軸草というので、葉は輪生しているものとばかり思っていましたが、5枚の小葉が半輪状についていて、上下の小葉を重ね合わせると輪状になるというものでした。淡い色が多い山野草の中で、紅色の花がとても鮮やかで目立ちます。花言葉は「澄ました壁際の貴婦人」ですね。

f:id:noyama_ko:20210809145629j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145643j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145654j:plain

(↑上の写真)左=ノハナショウブ、中と右=色違いのヒメシャジン

 ヒメシャジン(姫沙参)はキキョウ科ツリガネニンジン属。APG牧野植物図鑑によると本州中・北部の亜高山帯から高山帯下部に生える多年草というこで、偏在しているので一般的図鑑には載っていないことが多いです。シャジン(沙参)とは ツリガネニンジン(釣鐘人参)の慣用漢名で、生薬としては解熱剤などに用いられるようです。ヒメシャジンは、ツリガネニンジンにくらべ花茎が高くならないので姫といわれるのでしょうか。雌しべの花柱が花冠の外にとび出ているところは、似ています。俯き加減に足下に咲いているところは、とても可愛らしいです。花言葉「控え目」を贈ります。

f:id:noyama_ko:20210809145815j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145926j:plain
f:id:noyama_ko:20210809145900j:plain

(↑上の写真)左=ノアザミ、中=ハナチダケサシ、右=ハクサンフウロ

f:id:noyama_ko:20210809150034j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150049j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150104j:plain

(↑上の写真)左=茶臼山を遠望するお花畑に広がる夏空、中=ワレモコウ、右=マルバダケブキ

f:id:noyama_ko:20210809150222j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150242j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150258j:plain

(↑上の写真)左=シモツケソウ、中=シモツケ、右=タカネナデシコ

f:id:noyama_ko:20210809150405j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150418j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150434j:plain

(↑上の写真)左=トンボソウ、中=ネバリノギラン、右=ヤマホタルブクロ

 ネバリノギラン(粘芒蘭)はユリ科でしたがAPG新分類でキンコウカ科ソクシンラン属。北海道から九州に生える多年草。写真のように花茎には小型の葉がつき、総状花序の花をつけます。花には披針形の苞があり、それが突き出ているのが特徴で、花はいつまで待っても完全には開かないそうです。花茎に触るとネバネバした粘液が出ていて、粘つきます。似た花にノギランがありますが、これは粘つかないので両者の区別点になります。

f:id:noyama_ko:20210809150553j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150609j:plain
f:id:noyama_ko:20210809150651j:plain

(↑上の写真)左=ヤマハハコ、中=ウスユキソウ、右=(参考)スイスアルプスのエーデルワイス(白馬五竜高山植物園にて)