野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

霧ヶ峰八島湿原・・・令和3年7月23日

 八島湿原を一周して、自然の観察をしました。約2時間ですが、花に囲まれての時間を過ごすことが出来ました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=八島湿原入口、中=ニッコウキスゲ、右=ノハナショウブ

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(↑上の写真)左と中=ノアザミ、右=ノハラアザミ

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(↑上の写真)左=タチフウロ、中=ハナチダケサシ、右=エゾナデシコ

 タチフウロ立風露)はフウロソウ科フウロソウ属。中部地方、四国、九州に分布し、日当たりのよい山地などに生える多年草ということです。ハクサンフウロと似ていますが、タチフウロは花弁にある3本の紅色の筋が一本線であるのに対して、ハクサンフウロは筋の先が枝分かれしています。また、タチフウロは花後小花柄は曲がり、蒴果を直立するのが特徴のようです。牧野富太郎博士は、フウロ(風露)の意味は不明、としています。インターネットで調べると「農地で、周囲が木で囲まれている草刈場を『ふうろ野』と呼びます。フウロソウは、『ふうろ野』に生える草という意味からきている」そうです。また、「フウロ風炉)は茶席で湯を沸かす風炉と同じで、四辺のうち火入れをする一辺が開いているもの」だそうです。茶席では風炉はフロと呼ぶようですし、風炉は丸い形になっています。この三方を囲まれた風炉野に生えていた風炉草がいつしか「風露草」になったというのが語源説のようです。回りくどい話でしたが、どうですか。

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(↑上の写真)左と中=シモツケソウ、右=オニシモツケ

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(↑上の写真)左=オオカサモチ、中=シシウド、右=ヤナギラン

 オオカサモチ(大傘持)はセリ科オオカサモチ属。本州中部以北の山地に生える多年草。この花を知るまではシシウドとばかり思っていましたが、草姿がどうも同じようではないなと気づきだした時にオオカサモチと知って、それ以来、遠目にも区別がつくようになりました。オオカサモチは大傘持で、僧侶が練り歩くときにその僧侶にお付きの者が大きな傘を捧げますが、その大きな傘を擬えたもののようです。そう思ってみると、真ん中の平らな花穂が何となく大傘のように見えてきます。シシウドとは見間違えることがなくなりました。どうでしょうか。

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(↑上の写真)左=湿原の風景、中=イブキトラノオ、右=ワレモコウ 

 ワレモコウ(吾亦紅・吾木香・割木瓜)はバラ科ワレモコウ属。日本各地に広く分布する山野の草原に生える多年草。ワレモコウが草原にすっと首筋を伸ばして咲いている姿は「吾もまた紅よ」と主張しているようですね。志賀直哉著「暗夜行路」に主人公謙作が妻直子を置いて、独り大山に登って見たワレモコウの咲く広々とした草原は、謙作の心を長い暗夜から救い出し、晴れやかな精神に浄化してくれるようでしたね。妻直子とのわだかまりも消えてしまいました。「われもこう、そのほか名を知らぬ菊科の美しい花などの咲き乱れている高原の細い道を急がず登って行った。放牧の牛や馬が、草を食うのをやめ、立ってこっちを眺めていた。ところどころに大きな松の木があり、高い枝で蝉が力いっぱい鳴いていた。空気が済んで山の気は感ぜられたが、登りゆえになかなか暑かった。そして背後に遥か海が見えだすと、所々で一服しながら行った。」この登山で熱を出した謙作を直子は見舞って「とにかく、自分はこの人と離れず『どこまでもこの人について行くのだ 』というような事をしきりに思いつづけた。」(最後の一行)のでしたね。

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(↑上の写真)左=ホソバノキリンソウ、中=タカトウダイ、右=ウツボグサ 

 ホソバノキリンソウ(細葉黄輪草・麒麟草)はベンケイソウ科キリンソウ属。『牧野新日本植物図鑑』によると、北海道及び本州の草むらの中に生える多年生草本ということです。ベンケイソウに比べ、花が密に咲き、葉は狭く、鋸歯が尖っているので区別される、また、和名は、細葉の「麒麟草」である、とあります。Web:図鑑netモバイルブログでは「本来は、麒麟草ではなく、黄輪草だった」説をとっています。キリンソウの花は、黄色いです。その花が、植物体のてっぺんに、輪状に付きます。だから「黄輪草」と呼んでいたのが、のちに、「麒麟草」に取り違えられた、というのです。野楽力研究所としてはこの説を支持したいです。みなさんはどうでしょうか。

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(↑上の写真)左=イタチササゲ、中=カラマツソウ、右=カワラマツバ

 イタチササゲ(鼬豇豆マメ科レンリソウ属。日当たりのよい山地に生える多年草。牧野植物図鑑によると「鼬豇豆のイタチ(鼬)は、黄色の花が後に褐色に変わるので、イタチの毛の色が黄赤色であるのに、なぞらえたものであろう」ということで、多くの図鑑がこの説に従っています。また、牧野植物図鑑のササゲの項に、「ササゲは捧げるという意味で、はじめ豆果が上を向くものにつけられた名であるという」と、伝聞で書かれています。

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(↑上の写真)左=キバナノヤマオダマキ、中=コバノギボウシ、右=クガイソウ

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(↑上の写真)左=湿原一周路の道、中=フタバハギ、右=クサフジ

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(↑上の写真)左=キンバイソウ、中=ノコギリソウ、右=ミツモトソウ

 ミツモトソウ水元草・水源草)はバラ科キジムシロ属。北海道、本州、九州に分布し、山地の谷沿い、水辺、湿った林縁などに生育する多年草ということです。キジムシロ、ヘビイチゴなど春に咲く黄色い花によく似ていますが、ミツモトソウは山地に夏に見られることで区別できそうです。ミツモトソウは、はじめ、三葉が茎についている草ということで「三元草」かと思っていましたが、湿地など湿ったところに生えているので、語源は、水源または水元(いずれもミズモト)、即ちミズモトソウが訛ってミツモトソウになったという説が有力のようです。如何でしょうか。

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(↑上の写真)左=ノリウツギ、中=オオバノダイコンソウ、右=夏空の広がる湿原