野楽力研究所

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都立浅間山公園・・・令和3年4月23日

 府中市にある都立浅間山公園は、古多摩川が流れていた時に多摩丘陵から切り離されムサシノキスゲが独特の進化を遂げたことで有名です。毎年5月の連休にキスゲ祭りが行われます。(本年は昨年に続き中止)キンランでも有名です。今日は青空がすっきり晴れ上がり、珍しく富士山が遠望されました。今日の浅間山の様子です。

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(↑上の写真)どれもムサシノキスゲ、右=群生の様子

 ムサシノキスゲ(武蔵野黄菅)は、ススキノキ科(以前はユリ科)ワスレグサ属。キスゲ浅間山で独自の進化をし、変種したもので檜山庫三著「武蔵野植物記」に檜山氏がムサシノキスゲ命名し、花型はニッコウキスゲよりもノカンゾウに近く、芳香があり、葉は8月には枯れ始めるということです。山本研二氏の「東京発花露めぐり」では、「ムサシノキスゲは花のつき方が少し上向き加減」であり、その様子を「受け咲き」と表現しているそうです。ワスレグサ(忘草)属というのは、今昔物語でいうワスレグサ即ちノカンゾウのことと思います。親の墓参りを忘れてしまうというワスレグサでしょう。

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(↑上の写真)どれもキンラン、右=群生の様子

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(↑上の写真)左=ギンラン、中と右=ササバギンラン

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(↑上の写真)左と中=ハンショウヅル、右=ホウチャクソウ

 ハンショウヅル(半鐘蔓)はキンポウゲ科センニンソウ属。本州、九州の山地の林内に生える落葉つる低木。ということは草本ではなく木本ということで、よく見ると冬でも枯れずにのこり、その茎から若芽を出します。和名は、花の形が半鐘に似ていることから名付けられたということですが、洒落た半鐘と思いました。実はセンニンソウ(仙人草)属ということで、仙人のひげを思わせる羽毛状の羽毛の根もとに種子をつけ、それが集まって集合果となっています。タンポポ果の冠毛が羽毛状になったものと考えると想像しやすいです。

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(↑上の写真)左=ジシバリ、中=ニガナ、右=ヒゴクサ

 ジシバリ(地縛り)は、キク科ノニガナ属。北海道から九州まで日当たりのよい山野の裸地によく生える多年草ということです。茎から縦横に地面に貼りつくように匍匐枝を出して広がります。その様子が地面を縛りつけるようだというのでジシバリ(地縛り)の名がついたということです。別の場所に生えていると見間違えるものにオオジシバリがあります。花もジシバリよりも大きいのですが、比較ができないと区別しにくいです。ですが、ジシバリを初めて見るとその葉が丸っこく見えて可愛らしいです。オオジシバリ(4月19日の片倉城跡公園参照)は、葉がへら形で、柄に当たる部分が多少タンポポの葉のように切れ込みがあるので区別ができます。庭に植えても他の植物が生えているところでは日光の取り合いに負けて消滅してしまいます。強そうで弱い、可愛らしい裸地の植物です。

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(↑上の写真)左と中=ムサシアブミ、右=シャガ

 シャガ(射干)はアヤメ科アヤメ属。日本全土及び中国の湿った林下に生える常緑多年草。和名は、深津正著『植物和名の語源』によるとアヤメ科のシャガをヒオウギの仲間と誤認し、漢名射干(やかん)の射(や)を慣用音で「シャ」と読み、シャカンといったものが詰まったものらしいとあります。日本のものはいずれも染色体が3倍体のため種子がつくれず、人為的に株分けで増殖ものといい、自然林内には無いとのことらしいです。葉は、ネギの葉を潰したのと同じで、表裏がない単葉面の葉ということです。花はとてもきれいで林下の貴婦人という感じですね。

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(↑上の写真)左=キスゲ橋、中=尾根筋からの富士山遠望、右=堂山の浅間神社