いよいよ紅葉前線も終局を迎え、東京の平野部に降りてきました。ここ高幡不動尊は、今日は一番の見頃を迎えていました。高幡山全山もみじに燃えています。さらに境内の外周遊歩道の法面は、シダの宝庫です。足下には、この時季でしか見られないオオハナワラビも花(胞子葉)を咲かせていました。今日の様子です。
(↑上の写真)左=五重塔、中と右=境内のもみじです。
(↓下の写真)境内のもみじの様子です。
(↑上の写真)鐘楼とヤマモミジ
(↑上の写真)左=イヌワラビ、中=イノデ、右=ゼンマイ
イヌワラビ(犬蕨)はイワデンダ科メシダ属。冬には枯れる夏緑性で、人家の周辺、山地のいたるところにごく普通に生育するシダらしい羊歯、といわれます。北川淑子著「シダハンドブック」の説明では、形質は変化に富み、ソーラスをつける葉の長さが20~50cm以上までと幅広く、色も斑入りを含め、黄緑から濃緑色まで見られる。葉色の濃いものは、軸が紅紫色を帯びることが多い。また、葉の切れ込み方にも深浅、鈍鋭がある、ということですから、なかなか同定は他のシダ同様、難しいです。そこで、シダらしいシダで、先端が槍の穂先のようになっている2回羽状のもので、1回羽状のこれこそ槍の穂のようなホシダ(穂羊歯)と違えば、イヌワラビと、とにかく覚え、形質は変化に富むということですから、その違いを徐々に目に止めていくということになるでしょうか。図鑑の図版もそれぞれ異なっているように思います。
(↑上の写真)どれもタチシノブで、左=栄養葉と胞子葉の両方が写っています、中=草丈の低い栄養葉、右=胞子葉の裏面の胞子嚢のようす
(↑上の写真)左=イノモトソウ、中=オオバノイノモトソウ、右=オオハナワラビ
イノモトソウ(井之許草)もオオバノイノモトソウ(大葉井之許草)もイノモトソウ科イノモトソウ属。東北南部以南の山地や低地の林床、林縁に普通に生える常緑多年生シダ。中軸(葉軸)に翼があるのはイノモトソウで翼のないのものがオオバノイノモトソウ。両者とも胞子葉と栄養葉の2形があり、胞子葉は草丈が高く羽片(葉)の幅は狭いが、栄養葉は草丈は短く羽片の幅は広く、縮れた感じがします。両者ともに胞子葉の胞子嚢(ソーラス)は羽片の裏面の縁につきます。
(↑上の写真)左=シケシダ、中=ハリガネワラビ、右=ベニシダ
(↑上の写真)左=ヤブソテツ、中=ヤブソテツ葉裏の胞子嚢、右=ヤマヤブソテツ
ヤブソテツ(藪蘇鉄)はオシダ科ヤブソテツ属。常緑性で東北中部以南の林内や石垣などに生育し、胞子嚢群はほぼ円形、すべての小葉の裏面にまばらにつける、という。写真の下側には葉の表面がぶつぶつになっている葉身があります。その葉(羽片)の裏側には胞子嚢がついていると分かります。ヤマヤブソテツ(山藪蘇鉄)もオシダ科ヤブソテツ属。常緑性で、本州〜九州の山地の林内や林縁に生えるとのこと。ヤブソテツの羽片の基部は円いですが、オニヤブソテツの羽片基部は上側に耳状突起(耳朶、耳片)が出ています。素人としては区別しやすいですが、必ずしもそうでない場合もあり、その場合は、胞子嚢の散らばりや形状で同定するそうです。
(↑上の写真)左=ミドリヒメワラビ、中=ヤワラシダ、右=リョウメンシダ