野楽力研究所

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(野川公園)自然観察園・・・令和2年9月19日

 野川公園の自然観察園は、無料で開放されています。野川に注ぐ湧水の湿地帯ということで湿地を好む平地の野草が主に観察できます。ヒガンバナ、シュウカイドウ、ツリフネソウ、カリガネソウが満開です。今日の様子です。(写真をクリックすると拡大されます)

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(↑上の写真)左=自然観察園入口、中=ヒガンバナ、右=シロバナヒガンバナ

 ヒガンバナ彼岸花)はヒガンバナ科ヒガンバナ属。北海道以南の墓地、路傍に生える多年草。有毒植物ですが救荒植物として鱗茎をさらして澱粉をとり、食用にすることがあったそうです。ヒガンバナは染色体が3倍体なので種子ができませんが分球で増えるので、一度植えると年ごとに株が増えていきます。しかし、大きな移動は人為的なもの。球根がリコリンという有毒物質を含んでいるので動物に嫌われ、土葬の墓や土堤などでネズミに穴を掘られないようにこの球根を植えたといいます。墓に縁のある花で、彼岸の頃に茎をのばして花をつけるので彼岸花と言われるようになったそうです。花が枯れると葉を出し、冬に葉を茂らせます。葉は自分の花を見ることはありませんし、花は葉を見ることがないので加賀地方の方言で彼岸花のことを「ハミズハナミズ」というそうです。曼珠沙華梵語で大きい赤い花という意味で仏教由来の名称です(深津正著「植物和名の語源」参照)。

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(↑上の写真)左=シュウカイドウ群落、中=シュウカイドウ・雄花、右=雌花

 シュウカイドウ秋海棠)はシュウカイドウ科シュウカイドウ属。江戸時代初めに中国から渡来した多年生の帰化植物。ベコニアの仲間で葉の形が左右非対称で雌雄異花。雄花は上の方で先に咲き、雌花は下の方で咲く。田中肇著「花の顔」によると、花には蜜は無く花粉のみ。訪花するハナアブ類は、蜜が目的でなく花粉を集めるためと考えられる。雄しべも雌しべも似ているので、間違えて雌しべにとまった時に花粉が雌しべにつくと思われる。花に訪花するハナアブの種類や数は少ないという(一部翻案引用)。もともと雄花が上で雌花が下に咲くので、風媒花ではないかと思いますが、どうでしょうか。雄花の内側の小さな2枚の花びらは花弁で2枚の大きな花びらは萼片、雌花の花弁は退化し、萼片の2枚が花びらとなっているということです。なお、雌花のもとの三角(錐)形をしたものは子房で、雄花と雌花の区別点になります。

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(↑上の写真)どれもミズヒキ、左=群落、中=通常見える花の表側、右=花の裏側

 ミズヒキ(水引)はタデ科イヌタデ属。花びらはなく、花びらのように見えるのは萼(がく)だそうです。萼片は上の3枚が赤く、下の1枚が白い。そのため花序を上から見ると(普通に見ていると)赤く、下からは(裏返して上の写真のように見ると)白く、それが紅白の水引に似ることから名づけられたといいます。時々見られる白い花のものはギンミズヒキ、紅白の混ざったものはゴショミズヒキといわれます。

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(↑上の写真)左=ツリフネソウの群落、中=キツリフネ、右=ツリフネソウ

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(↑上の写真)左=ヌスビトハギ、中=フジカンゾウ、右=イノコヅチ

 ヌスビトハギ(盗人萩)はマメ科ニスビトハギ属。日本全国の山野の林下に生える多年草。和名盗人萩は、泥棒が足音を立てないように歩く足跡が豆果(種子)の形が似ているため。現代的には豆果の形はサングラスに見立てられています。従って、小さいサングラスはヌスビトハギ、大きいサングラスはフジカンゾウとして見分けられます。豆果には短いかぎ型の毛が生えていて、衣服などに引っ付いた種子は、仲間の分布を拡げます。人にとってはヌスビトハギが蔓延るので大変です。

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(↑上の写真)左=ミゾソバ、中=ママコノシリヌグイ、右=シモバシラ

 ミゾソバ(溝蕎麦)はタデ科イヌタデ属。日本全土の原野、道端などの水辺に生える最も普通に生える1年草。丸山利雄著「しなの植物考」によると「ソバ(稜)とは、かどのことで、種子にかどのあることを示しているが、ミゾソバの種子にもソバと同様、かど(稜)のある種子である。ミゾソバを一名ウシノヒタイともいうが、これも葉の形が牛の顔に似ているからである。別名ハチノジグサは、葉面に八の字状の黒ずんだはん紋が出ることに基づいている。花は帯紅色が多いが白いものもある。その名のように溝などの水湿地に好んで群生する。他のタデ類と同じように、互生する葉の付け根にはっきりした節があるが、節と節との間隔が大きいので、直立はしないで、長さ1mほどの茎の三分の二は地面をはって、節ごとに根を出している。残りの三分の一を立てて、その先に花をつける」とあります。葉の形が「牛の額(ひたい)・牛の顔」のようだと覚えておくと区別しやすいです。

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(↑上の写真)左=カリガネソウ、中=サクラタデ、右=カラスノゴマ

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(↑上の写真)左=キツネノマゴ、中=タコノアシ、右=ヤマホトトギス

 キツネノマゴ(狐孫)は、キツネノマゴ科キツネノマゴ属。本州以南の草地や道端に普通に生える1年草。よく見ると可愛い花をぱらぱらと咲かせています。花穂全体が一斉に花咲くということがないので、イマイチの感じがします。可愛い花は2唇形の筒型で淡紅紫色。どこが狐の孫か?と考えさせられましたが、花穂が長く大きくなってみると狐の孫の可愛い尻尾にそっくりですね。大事に育ててみると枝分かれして結構整った草姿になります。ところが種子がこぼれて、次の年は、未生の若芽の除草に一苦労します。

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(↑上の写真)左=タチアザミ、中=トネアザミ、右=ヒヨドリバナ

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(↑上の写真)左=ヤブミョウガ、中=アカバゲンノショウコ、右=ムラサキシキブ