避暑地として有名な軽井沢にあるこの植物園は標高1000m。初秋が通り過ぎようとしているところです。ここでの目玉はミナヅキというノリウツギの一品種です。今が見頃。花は、見た目はアジサイのアナベルに似ています。ツリバナやフウリンウメモドキなどの赤い実が秋の訪れを知らせてくれています。今日の様子です。
(↑上の写真)左=植物園入口、中=サラシナショウマ、右=イヌショウマ
(↑上の写真)左=アサマフウロ、中=ノコンギク、右=ユウガギク
(↑上の写真)左=アキギリ、中=キバナアキギリ、右=アキノキリンソウ
(↑上の写真)左=アケボノソウ、中=コシオガマ、右=カリガネソウ
コシオガマ(小塩竈)は、ハマウツボ科コシオガマ属。北海道から九州の日当たりの良い山地に生える半寄生の1年草。葉緑体を持ち光合成をするのですが、自分一人では生きていけない植物で他の木や草の根に寄生し、栄養をもらって生きているということです。花が可愛らしくて植えてみると次の年にはずいぶん広がります。芽生えは弱々しいので大事に育てていると随分丈夫に大きくなり、秋の深まりとともに可愛い花をつけます。和名はシオガマギクに比べて小さいので小塩釜というそうですが、シオガマギク(塩竈菊)とは「牧野植物図鑑」によると「海岸の風景に趣を添えるものに塩釜があるが、本種は、花が美しいが葉までも(浜でも…掛詞)観賞にたえる美しいものであるというのでこの名を持ち、葉の様子が菊に似ているので塩釜菊という」ということです。コシオガマはもっと愛らしいと思います。野楽花言葉「あなたなしでは生きられない」「可愛いらしい女の子」「愛でる喜び」
(↑上の写真)左=シロバナサクラタデ、中=シロバナヤマジノホトトギス、右=セキヤノアキチョウジ
(↑上の写真)左=シュウメイギク、中=トウヒレン、右=フジバカマ
フジバカマ(藤袴)はキク科ヒヨドリバナ属。本州以南の川岸の土堤や湿った草地に生える多年草。絶滅危惧種。ヒヨドリバナに似ています。葉は対生ですが、3裂に深く切れ込んでいるところが違います。(澤田ふじ子著「天涯の花」より)花に生命を与えるから生花だと主張する未生斎一甫に未生流を起こさせるべく後見人を引き受けようとする九左衛門が「『おおせのとおり未生流はこの地で花を咲かせ、実をむすばせなければなりませぬ。僭越ながらわたくしが銭をかけ、一甫さまのお腕前をもってすれば、それがかなうと固く信じておりまする』雪見灯籠をおいた初秋の庭に、藤袴の花が咲いている。座敷のなかから花群(はなむれ)に目をそそいでいる未生斎一甫に、(但馬上田家の当主)九左衛門が力んで見せた」この時のフジバカマの花は一甫の目にどのように映ったでしょうか。フジバカマを見るたびに思い出す情景です。その時の立ち位置で今まで見てきた花の見え方も違ってくると思います。
(↑上の写真)左=レンゲショウマ、中=ヤマトリカブト、右=アズマレイジンソウ
レイジンソウ(伶人草)はキンポウゲ科トリカブト属。日本の山中に生える多年草。和名の伶人草とは、花の形が舞楽の時の伶人(註:雅楽を奏する人)が使う冠に似ているため。この冠のように見えるものは、花びらではなく、花は、距のある上萼片(1枚)側萼片(2枚)下萼片(2枚)の5枚の花弁化した萼片により囲まれていて、外からは見られません。初めて見た時は、トリカブトの紫色が褪めて白色がかったものように見えました。トリカブトの仲間ですが、レイジンソウということで麗人(実は伶人ですが)に逢えたようで忘れ得ぬ植物になりました。変種として関東地方のアズマレイジンソウ(東伶人草)、東北、北海道のオオレイジンソウなどがあるとのことです。
(↑上の写真)左=ヒゴタイ、中=ハバヤマボクチ、右=ミナヅキ(アジサイ科ノリウツギ属)
ヒゴタイ(平江帯・肥後躰)はキク科ヒゴタイ属の多年草。牧野植物図鑑によると愛知県、岡山県、四国、九州、朝鮮と隔離的に分布し、大陸と地続きであったころの日本に生えていた名残の1例。ウィキペディアによると、和名の漢字表記は「平江帯」(貝原益軒の大和本草)または「肥後躰」(肥後細川家写生帖)。環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類 VU(絶滅の危険が増大している種)に分類されています。花は、管状花が集まって球状になった写真のような紫色の頭状花を咲かせます。
ハバヤマボクチ(葉場山火口)は、キク科ヤマボクチ属の多年草。葉場山とは特定の地名ではなく緑肥などにする草を刈る場所のことです。ボクチとは火口(ほくち)のなまった言葉で、火をつける竃の口などを想像しますが、そうではなく火打石から出る火花を受けて最初に燃え上がらせるために用いたもので、ハバヤマボクチの葉裏の綿毛を乾燥させて集めたものを言うそうです。
(↑上の写真)左=マルバハギ、中=ツリバナ、右=フウリンウメモドキ