小海線松原湖の西方の八千穂高原花木園は、防鹿柵で保護されてから、多くの山野草に恵まれるようになりました。ヤナギラン、マツムシソウが咲き、カラマツソウ、ヒヨドリバナは終わりかけでした。トモエソウの花を見ることができたのは幸いでした。
(↑上の写真)左=花木園入口、中=キオン、右=オミナエシ
(↑上の写真)左=クガイソウ、中=オカトラノオ、右=カワラマツバ
(↑上の写真)左=トモエソウ、中=トリカブト、右=ヤマホタルブクロ
トモエソウ(巴草)はオトギリソウ科オトギリソウ属。日本各地の日当たりのよい草地に生える変異の多い多年草ということです。5枚の花弁が巴形になっている見応えのある大きな花ですが、一日花ということで、儚さも感じます。巴というと木曽義仲の側室の巴御前を思い浮かべてしまいます。色白く黒髪長く、容顔まことに優れた強弓精兵、一人当千の兵者なりといわれたそうです。黒髪を鎧に垂らし、烏帽子を被り、白鉢巻を締めた凛々しい騎馬姿が思い浮かびます。宇治川の戦いで頼朝軍に攻められ、義仲は、巴御前に落ちのびるよう指示するのですが、最後のご奉公と言って、敵将の首を斬り落とし、その後、姿を変えて東国の方へと落ちのびて行ったそうです。しかし、彼女は強運で、頼朝から召され、和田義盛に嫁ぎ、朝比奈義秀を産み、和田合戦のあと越中の石黒氏に身を寄せ、その後出家して、菩提を弔う日々を送り、91歳で生涯を終えたと伝えられています。トモエソウの花を見るたびに、思い出される、昔日譚です。
(↑上の写真)左=ヤナギラン、中=ヤマハハコ、右=ノコギリソウ
(↑上の写真)左=ヒヨドリバナ、中=ヨツバヒヨドリ、右=ワレモコウ
(↑上の写真)左=マツムシソウ、中=ツリガネニンジン、右=チダケサシ
(↑上の写真)左・中=ママコナ、右=ノハラアザミ
(↑上の写真)左=キバナノヤマオダマキ、中=コウゾリナ、右=アキノキリンソウ
キバナノヤマオダマキ(黄花山苧環)はキンポウゲ科オダマキ属。ヤマオダマキの中で、花全体が距の先まで黄色のものをキバナノヤマオダマキというそうです。傘を被った昔の街灯を想像し、電球に当たる部分が5枚の花弁になっていて、傘に当たる部分は花弁ではなく蕚で5枚。ちょっと見た目には距(きょ=尻尾のように伸びている部分)は蕚の一部のように見えますが、よく見ると、これは電球に当たる花弁の尻尾が伸びた距で、蕚の一部ではありません。蕚の間から距が伸びています。ヤマオダマキでは、蕚と花弁の伸びた距の部分が紅紫色で鮮やかです。静御前が「しづやしづ 賤(しづ)のをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな〜」と謡いがながら舞ったという「をだまき」が苧環で、今でも紙紐や麻紐などの芯がなく巻紐になっているものが疑似の苧環のようです。草のオダマキは糸を繰った糸巻きの形をいったもので、苧環とは違うという人もいますので研究の必要があります。
(↑上の写真)左=シモツケ、中=シモツケソウ、右=ノリウツギ
(↑上の写真)左=アカバナ、中=メマツヨイグサ、右=カラマツソウ
アカバナ(赤葉菜・赤花)=アカバナ科アカバナ属。北海道南部以南の山野の水辺や湿地に生える多年草。和名の赤葉菜は夏から秋にかけて葉がしばしば紅紫色になるところからついたといいます。写真のように野生で白花種もあるのでシロバナノアカバナとは言えないので、白くてもアカバナ。花の色でつけられた名前ではないので赤花と書くより、牧野植物図鑑による赤葉菜が相応しいと思います。アカバナ科のヤナギランはアカバナと同じく花弁が4枚で、種子は花弁の下の子房が蒴果となり、綿毛を飛ばします。アカバナに似ているユウゲショウもアカバナ科で花のつくりは同じですが、種子が綿毛にならず、種子を飛び散らすところが違います。