八ヶ岳連峰を横切る麦草峠は、標高2170m。防鹿柵で囲まれたこの野草園では、ハクサンフウロが一面に咲いており、イブキジャコウソウ、アキノキリンソウ、ネバリノギランが満開です。クモキリソウの立派な株がありました。管理を麦草ヒュッテでされており、協力金100円で開放してくださっているのは、ありがたいことです。しかし、皆さん白駒池がお目当ての様で、ここに立ち寄る方は、ほとんどいないようです。
(↑上の写真)麦草峠の標識、この右手が山野草園、中=アキノキリンソウ、右=イブキジャコウソウ
(↑上の写真)左=ハクサンフウロ、中=ハクサンフウロの群生、右=マルバダケブキ
(↑上の写真)左=オトギリソウ、中=ウツボグサ、右=カライトソウ
カライトソウ(唐糸草)はバラ科ワレモコウ属。本州中部の高山帯に生える多年生草本で日本固有種。滋賀県、長野県、岐阜県などで絶滅が危惧されています。ワレモコウ属なので葉のつくりや草全体の姿はワレモコウに似ています。紅紫色の糸状のものは、雄しべの変化したものでその糸の感じが中国伝来の絹糸(唐糸)のようなので、それに擬して唐糸草と名付けられたということです。はじめて見た時には、鮮やかな紅紫色なので、外国から渡来したもの、だから唐糸草だと思っていたのですが、日本固有種で日本にしかない、しかも中部地方の限られた高山にしかないという貴重なものでした。夏にスキー場に設けられた山野草園で無造作に見られるものでしたが、有難さが増すようです。
(↑上の写真)左=イワギキョウ、中と右=クモキリソウとアップ写真
(↑上の写真)左=ゴマナ、中=キンバイソウ、右=センジュガンピ
(↑上の写真)左=シシウドが見得を切る山野草園から夏雲の広がる麦草ヒュッテを望む、中と右=シシウド
シシウド(猪独活)は、セリ科シシウド属。やや湿った日の当たる山地に生える多年生の大型草本。野原の中でこれほど目立つ山野草はありません。樹林地や草丈の高い草が生えるところでは見掛けません。必然的に草丈の低いお花畑でその雄姿で見得を切っています。市川海老蔵の石川五右衛門が見得を切っている歌舞伎の舞台を見ているようです。ところが、どの図鑑や解説書もあまり興味が無いらしく、ほとんど解説をしていません。茎は2mにもなり、中空で丈夫。鉄骨でもそうですが、太い場合は、中空にした方が、強度が保てるというわけです。セリ科ですからウド(独活)と同じ「独活の大木」になります。でも役立たずというわけです。猪にでもやっておけ、というくらい役立たずなので「猪独活(シシウド)」と言われるようになったということです。シシウドのために言うと、根は漢方で独活 (どっかつ)といい、発汗・鎮痛薬になるそうです。合掌造りの五箇山では、戦国時代、シシウドの葉(サクと言われていた)を原料の一つにして塩硝を作ったということです。世の中に役立たずのものはありませんね。
(↑上の写真)左=シモツケ、中=シモツケソウ、右=ハナチダケサシ
(↑上の写真)左=ネバリノギラン、中と右=ヤマハハコ
(↑上の写真)左=ワレモコウ、中=ウド、右=コバノギボウシ