野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

八ヶ岳山野草園つどいの里・・・令和2年7月2日

 梅雨の晴れ間を利用して訪れました。ビーナスライン・大門街道の白樺湖手前にあり、標高は1100m。昔の山里を復活させ、山里のさびれたわけや自然環境について考えてもらうきっかけづくりをしたいということで開設されています。自然のままということですが、大変肥えた土地のようでどの山野草ものびのびと育っています。山野草の販売もしています。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=入り口、中=マツモトセンノウ、右=センジュガンピ

 マツモトセンノウ(松本仙翁)はナデシコ科センノウ属の多年草。梅雨時の花が少ない時季に、緑の草の中に、目を瞠る鮮やかな朱赤色の花を咲かせますので、一度見ると忘れられない花となると思います。牧野富太郎博士によれば、原種は九州に産するツクシマツモトだそうです。博士は、マツモトは松本幸四郎の紋所に由来すると述べていますが、今では、ほとんどの人が無視しているようです。家紋に描かれた花は図案化されているとはいえ、どう見てもセンノウの花のようには見えません。なお、博士は、信州松本に生えていたからという説は強く否定されています。ところで、マツモトセンノウは、江戸時代品種改良され、園芸家に随分もてはやされたようですが、その後廃れ、僅かに生き残っていたものが、戦後、育てられたということです。名前の由来も出身地もはっきりしない可哀そうな花ですが、御先祖はきっと由緒正しい家柄の花(姫)君と思います。野楽花言葉「凛として華やぐ」。

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(↑上の写真)左=シキンカラマツ、中=カラマツソウ、右=カワラナデシコ

 シキンカラマツ紫錦唐松)は、キンポウゲ科カラマツソウ属。北関東や長野県の山地に生える多年草福島県茨城県では絶滅危惧種になっているとのことです。花には、花弁はなく花弁に見えるのは萼片で、その色が紫で雄しべが黄色の美しい花ということで「紫錦」と言われるとのこと。「唐松」はカラマツソウ属ということでつけられたものでしょう。上の写真から、カラマツソウ(唐松草)の花の形は、色は違いますが、唐松の早春の芽吹きの様な形をしています。カラマツソウ属の葉は複葉ですが、小葉は可愛らしく、柔らかそうな小さな葉をしていますので、風にそよぐと涼感を感じます。いっぺんに好きになってしまいます。野楽花言葉は「浴衣がお似合い」「腕にもたれて」。

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(↑上の写真)左=オカトラノオ、中=クガイソウ、右=サワギク

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(↑上の写真)左=クララ、中=イタチササゲ、右=ノハナショウブ

 イタチササゲ(鼬豇豆は、日当たりのよい山地に生えるマメ科レンリソウ属多年草。牧野植物図鑑によると「鼬豇豆のイタチ(鼬)は、黄色の花が後に褐色に変わるので、イタチの毛の色が黄赤色であるのに、なぞらえたものであろう」ということで、多くの図鑑がこの説に従っています。また、牧野植物図鑑のササゲの項に、「ササゲは捧げるという意味で、はじめ豆果が上を向くものにつけられた名であるという」と、伝聞で書かれています。ササゲの漢名が「豇豆」。ところでレンリソウ属というのが気になります。レンリソウ(連理草)は、マメ科レンリソウ属の本州及び九州のやゝ湿り気のある草原に生える多年草草本。そもそもレンリ(連理)とは、白居易の「長恨歌」の最後の有名な「天に在りては、願わくは比翼の鳥となり、地に在りては、願わくは連理の枝とならん」と詠った連理でしょう。1対または2対の対生の小葉のつき方が如何にも比翼のようであり、しかも、葉軸先端の巻きひげが天に縋ろうとするような風情が連理を思わせたのではないかと思います。特に、この豆にレンリソウと名付けた方は、何か思うところがあったのではないでしょうか。どんな思いだったでしょうか。

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(↑上の写真)左と中=タマガワホトトギス、右=トリアシショウマ

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(↑上の写真)左と中=シチダンカ、右=ヒヨドリバナ(咲き始め)

 シチダンカ(七段花)は、アジサイアジサイ属の落葉低木。江戸時代末期、シーボルトの「日本植物誌」(365頁に観察図)によってヨーロッパに紹介さましたが、以後日本で発見されず存在が疑問視されていたそうです。それから130年後の昭和34年に六甲山で偶然、「日本植物誌」の観察図と同じ株が発見され、それ以後、差し木で増やされた苗が各地に広がったということです。シチダンカは「ヤマアジサイ」の変種で、星形の装飾花が七段(?)にも重なったように咲くことから名付けられたということです。ここでは株も大きく、花も紺色鮮やかに咲き誇っています。

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(↑上の写真)左=ニワトコの実、中=ヤマオダマキ(最後の花と実)、右=園内風景