野楽力研究所

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箱根湿生花園・・・令和2年6月24日

 湿生花園も花の端境期ですが、それでも、ここでのこの時期の花、ハンカイソウ、シモツケソウ、ノハナショウブヌマトラノオなどを愛でることができました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=湿生花園受付建物、中=マツモトセンノウ、右=ハンカイソウ

 ハンカイソウ(樊噲草)は、キク科メタカラコウ属。黄色い大ぶりの花で、一見、マルバダケブキと見間違えましたが、葉の形が違いました。見かけない草と思いますが、静岡県以西の本州、四国、九州に分布するということで、関東は分布区域外なので、納得です。しかし、名を調べてみると「樊噲草」と漢字辞典でも探すのに四苦八苦。樊噲は、鴻門の会で劉邦を謀略から救った功臣。フム、フム、三国志か、と三国志を紐解いても出てこないです。劉邦と樊噲は、紀元前200年頃の人、三国志劉備(玄徳)と諸葛孔明は紀元200年頃の人、400年くらい違います。名前について、こう分かって「半解」ですね。

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(↑上の写真)左=クガイソウ、中=ヌマトラノオ、右=オカトラノオ

 ヌマトラノオ(沼虎尾)は、サクラソウオカトラノオ属の多年草オカトラノオ岡虎尾)が丘に育ち、花穂が垂れ下がるのに対し、ヌマトラノオは湿地に生え、花穂がまっすぐ直立しているので区別がつけやすい。両者は交雑しやすく、交雑したものはイヌヌマトラノオといい、花穂は垂れ下がりオカトラノオと区別しにくいです。科博付属自然教育園では、その変遷の様子が見られます。そもそもトラノオ(虎尾)という植物はあるのかというと牧野富太郎博士によれば、それはクガイソウ(九階草・九蓋草)の別名ということです。上の写真3枚で、この関係が能く解かります。

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(↑上の写真)左=シモツケ、中=シモツケソウ、右=オニシモツケ

 シモツケ(下野)はバラ科シモツケ属の落葉低木。牧野植物図鑑では、シモツケと名付けられたのは「下野の国(栃木県)で最初見つけられたからであるという」と記載されています。松田修著「花の文化史」には、それ以外に「花が霜を置いたように咲くので出た名ともいう」とあります。謂れを知らず、初めてシモツケの花を見た時には、「綺麗な花だな。霜を置いたような花だ。だから霜つけというのかな」と思ったものです。最近は、園芸種も増え、街中でも見られるようになりました。花のつき方は、霜以外に星を散りばめたようでもあります。野楽花言葉は「星空の下、夢ひらく」「輝き」。草本シモツケソウは、似たような花ですが、花のつき方、葉も違いますね。

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(↑上の写真)左=カキラン、中=トキソウ、右=ヒメノキシノブ

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(↑上の写真)左=ノハナショウブ、中=トリアシショウマ、右=エゾノキリンソウ

 ハナショウブ(野花菖蒲)はアヤメ科アヤメ属の多年草ハナショウブの原種といわれます。Web岡山理科大学によると、大型の草本のため栄養が必要なので湿地の周辺部、中栄養の所に生え、毒草であるため動物には食べられないので、残って群落をつくるということです。「孰れがアヤメかカキツバタ」と謂われますが、そのカキツバタとノハナショウブは、とても良く似ています。ここ花園の説明板に「カキツバタは花弁の基部の舌状紋(分かりやすいと思うので勝手に名付けました)が白いが、ノハナショウブは黄色」とあります。勿論、アヤメは舌状紋が綾目になっていますので、両者と異なります。花園掲出の説明は分かりやすいと思います。カキツバタの白い舌状紋は、本HP6月4日の「オオムラサキセンター農村公園」の写真をご覧ください。

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(↑上の写真)左=アサザ、中=クサレダマ、右=ヒツジグサ

 クサレダ(草連玉)はサクラソウオカトラノオ属の多年草。花が黄色なので別名イオウソウ(硫黄草)。オカトラノオ属というので、花穂の形はオカトラノオに似ています。クサレダマは草+レダマ(連玉・麗玉)のことですが、レダマはもともとスペイン語のレタマのことなので漢字は当て字ということになります。スペイン語辞書でretamaを検索するとエニシダと出てきます。エニシダは江戸時代前後にスペインの宣教師によって持ち込まれたようです。マメ科の低木でマメ科特有の花の形、蝶形花を黄色く咲かせます。クサレダマはこのレタマの草本ということで名付けられたようですが、花が黄色という以外全く似ていませんので、惑わされない方がいいと思います。 

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(↑上の写真)左=ムシャリンドウ、中=ミソガワソウ、右=ヤツシロソウ

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(↑上の写真)左=ニッコウキスゲ、中=キンロバイ、右=シャジクソウ

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(↑上の写真)風景三選:左・中=湿原の木道をすすむ、右=南に広がる台ヶ岳