野楽力研究所

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入笠湿原・入笠すずらん山野草園・入笠山お花畑・・・令和2年6月16日

 里の花は一段落したので、梅雨の晴れ間を利用して、標高の高い、初夏を迎えたばかりの山野草を訪ねました。入笠山(にゅうかさやま=標高1955m)はマイカー規制中で、沢入登山口からゆっくり1時間半かけて、まず入笠湿原(標高1734m)へ、それからゴンドラ頂上駅のすずらん山野草園へ、さらに戻って入笠山お花畑、入笠山登山と欲張りました。キバナノアツモリソウが見られたのは、幸運でした。(写真をクリックすると拡大できます)

<沢入登山口から入笠湿原出口まで>

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(↑上の写真)左=湿原風景、中=クリンソウ、右=アヤメ

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(↑上の写真)左=レンゲツツジ、中=キンポウゲ、右=シロバナヘビイチゴ

 キンポウゲ(金鳳花)は、キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草。別名は、ウマノアシガタ(馬脚形)といいますが、牧野植物図鑑の「ウマノアシガタ」の項によれば「根生葉の周縁が浅く5裂し、裂片が鋭尖形でないから遠目には円形に見えるのでウマノアシガタの名がついた」とあります。ところが、山渓「日本の野草」の「キンポウゲ」の項には「花は5弁ですが、5弁より多いもの(重弁のもの)があり、これをキンポウゲと呼び、普通のものをウマノアイガタと呼んでいた。和名の金鳳花は、花の色からきたものである。ウマノアイガタの名は、根生葉の形からきたものだが、近くでよく見るとあまり(馬脚形には)似ていない」と書いてあります。どう見ても馬の足(脚)型のようには見えませんでした。

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(↑上の写真)左=すずらん群生地からの湿原の眺め、中・右=(ニホン)スズラン

<湿原出口からすずらん山野草園>

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(↑上の写真)左=アツモリソウ、中・右=キバナノアツモリソウと群落

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(↑上の写真)左・中=クマガイソウ、右=ササバギンラン

 クマガイソウ(熊谷草)は、ラン科アツモリソウ属の多年草。クマガイソウ属でなくアツモリソウ属である処に物語性がありますね。クマガイソウは、その花を熊谷直実が背負った母衣(ほろ)になぞらえたものと牧野植物図鑑にあります。母衣は、平安末期に騎馬武者が背中に流れ矢の中るのを防ぐために背負った袋状のもので、風を孕むと大きく膨れるようにしたものです。意匠はいろいろあるようで、アツモリソウの花は平敦盛の母衣をなぞらえたといいます。鎌倉時代以降母衣の使用は廃れたようです。一の谷の源平合戦で、前夜、青葉の笛を吹いていた弱冠17歳の平敦盛を、平山季重と先陣を争っていた熊谷直実が組み倒し、顔を見て敦盛が息子の直家と同じ年であることを思いつつ首を切ったことが、直実の出家の発心になったといいます。直実と先陣を争った平山季重は、京王線平山城址公園駅と南の多摩丘陵にその名を留めています。

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(↑上の写真)左・中=ズダヤクシュ、右=マイヅルソウ

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(↑上の写真)左=「恋人の聖地」からの眺め、中・右=ニッコウキスゲ

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(↑上の写真)左=アヤメ、中=グンナイフウロ、右=ヤグルマソウ

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(↑上の写真)左=甲斐駒ヶ岳、中=サンリンソウ(と表示されていました?)右=アマドコロ

<湿原へ戻り、出口から入笠お花畑、入笠山へ>

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(↑上の写真)左・中=クリンソウと群落、右=アオマムシグサ

 クリンソウ九輪草)はサクラソウサクラソウ属の日本原産の多年草。その花のつき方が、寺院の塔の相輪の中間にある宝輪の九輪のように花がつくので、九輪草と名付けられたということです。如何にも花が九層のように何段にも咲くところに神々しさも感じます。たくさんできる種子は芥子粒のようですが、これを植木鉢に蒔き、深い鉢皿に水を張って、水を切らさないように置いておきます。2年目に花が咲きます。水辺を好みます。野楽花言葉=「天空の高みを目指して」「輪になって踊ろう」

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(↑上の写真)左=お花畑を仰ぐ、中=スズラン、右=ツマトリソウ

 ツマトリソウ(褄取草)は、APG新分類でヤブコウジツマトリソウ属。和名の由来は、花弁の先端にしばしば淡い紅色の縁があり、その色の入り方が鎧の威色目の一つである褄取りに似ているためという。しかし、これだけでは褄取りの意味が分かりにくいですね。鎧にしろ兜にしろ、縅様式で作ったものは、いろいろ芸術的な縅模様がありますが、どの縅模様も一番端(兜では肩に当たる下の部分、鎧では下のひらひらの縁の部分)は、本体の模様と違って、どれも好みの色で二列ほど縁取りがされています。その縁取りを褄取りというようです。ツマトリソウは淡い紅色で縁取り(=褄取り)されているということですが、今回出合ったツマトリソウで褄取りのあるものはありませんでした。シロバナヘビイチゴの白い花の群生の縁にこのツマトリソウが咲いていることが多いので、多くの人がこの花を見落としているようでした。シロバナヘビイチゴの花弁の先端は丸く、ツマトリソウの先端は尖っているので、よく見ると区別がつきます。登山途中で出会った方が、ツマトリソウが咲いている、と教えてくれましたので気づくことができました。それにしても「フチトリソウ」でなく「ツマトリソウ」としたのは、名付け親の見識でしょうか。

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(↑上の写真)左=入笠山登山道の様子、中=山頂、右=頂上付近に残っていたズミの花

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(↑上の写真)左=オオヤマフスマ、中=クリンユキフデ、右=ムツバムグラ

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(↑上の写真)左=ミツバツチグリ、中=ヒメスイバ、右=シロバナヘビイチゴ