初夏の日和になりました。目に青葉が染みます。玉川上水もすっかり若葉に包まれ、上水の水がところどころ木漏れ日を輝かせながら細く流れています。昭和38年玉川上水小平監視所より下流への流れが止水されるまで(全面止水は昭和46年)太宰治が入水(昭和23年)できるほど水がとうとうと流れていました。大岡昇平著「武蔵野夫人」では、この南の分水恋ヶ窪村への水が玉川上水から来ていることの驚きが昭和23・4年の風景とともに描かれています。緑道を鷹の橋から小川橋までを自然観察しました。サワフタギやミズキの花が咲き、ガクウツギ、マルバウツギ、コゴメウツギなどのウツギ類が咲いていました。
(↑上の写真)左=玉川上水の様子、中=サワフタギ、右=ミズキ
(↑上の写真)左=ガクウツギ、中=マルバウツギ、右=コゴメウツギ
ガクウツギ(額空木)はアジサイ科アジサイ属。マルバウツギ(丸葉空木)はアジサイ科ウツギ属。コゴメウツギ(小米空木)はバラ科コゴメウツギ属。ウツギは空木です。茎に髄がなく中空になっているものをウツギ(空木)と言いますが、必ずしもそうではないようです。マルバウツギはウツギ属なので真正の空木ですが、ガクウツギはアジサイ属、コゴメウツギはバラ科コゴメウツギ属なので共に髄があり、中空ではありません。ガクウツギの花は、花弁が3枚の花のように見えるものは萼片が変化した装飾花で、ガクアジサイと同じ、虫を誘き寄せる働きの花です。本当の花は、装飾花の足許の小さな花です。ガクウツギがアジサイ科アジサイ属ということですから、納得ですね。図鑑によってはユキノシタ科になっていますが、遺伝子によるAPG新分類ではアジサイ科になりました。
(↑上の写真)左=ギンラン、中=キンランが上水縁のネザサの中で、右=キンラン
(↑上の写真)左=チゴユリ、中=オオジシバリ、右=スイカズラ
スイカズラ(吸葛)はスイカズラ科スイカズラ属の半常緑つる性木本。茎の髄は早くなくなり中空、葉は対生で、葉腋に甘い芳香のある花を2個ずつつける。田中肇著「花の顔」によると、「花は夕方から咲きはじめ、開花の瞬間、花びらや雄しべがぱっと飛び出す。夜咲いて、雄しべ雌しべが長く突き出る細長い管があり、その中には香りの高い蜜がある。こういう花はガが花粉を運ぶ。蜜はたっぷりあるため、日中はマルハナバチやセセリチョウもやって来て花粉を媒介する。」ということです。名前の由来は、湯浅浩史著「花おりおり」では「昔、子供たちはその蜜を吸い、名のもとになったという。」とありますが、牧野植物図鑑では、「この花の蜜を吸うときの唇の形に花びらが似ていることから来ている。」としています。確かに蜜は吸ったと思いますが、花の形がその時の唇の形に似ているから名付けられたという方が、花の形も表現していていいのではないか、と思いますが、どうでしょうか。