この時季、草花はありませんので樹木を中心に観察します。ここ日比谷公園は、公園周縁部を歩くと意外と樹種が多いです。西幸門かもめの広場の傍には郷土の森という部分があり、県木などが植栽されています。祝田門近くテニスコートの北には「三笠山」と言われる小高い丘があり、自然の感じがあります。日比谷公園は暖かいようで、まだ紅葉が散らずに見られました。
雲形池を彩る紅葉 もみじ
アキニレ(実) 首賭けイチョウ
アキニレ(秋楡)はニレ科。東海以西、アジア南東部に分布。樹皮は褐色の小さな皮目があり、不揃いな鱗片状に剥がれるのでトウカエデに似た樹皮をしています。葉は小さく互生。一名イシゲヤキ(石欅)といわれますが、ケヤキに似てはいますが材質が硬いからという。同種のハルニレは北海道に多く、葉が大きく、英語で「エルム」といい、北海道大学のエルムが有名といわれます。
首賭けイチョウ(日比谷公園松本楼前)は、首掛けでなく首賭け。首を賭けたということです。明治32年日比谷見附(現在の日比谷交差点)にあったイチョウが道路拡張のため伐採されるところだったのを、このことを聞いた日比谷公園生みの親の本多静六博士が驚き、すぐ東京市参事会の星亨議長に面会を求め、日比谷公園に移植させたもの。移植不可能とされていたものを本多静六博士が「首を賭けても移植させる」と言って実行させたので、この呼び名があるといいます。
オオモミジ アベマキ
キミガヨラン(ユッカ) セイヨウバクチノキ
アベマキ(アベ薪orアベ真木)はブナ科。分布は、関西以西、アジア南東部。アベは岡山地方の方言でアバタの意味でアベマキはアバタマキのことで、樹皮のコルク層が発達して凹凸があるからという。また、マキは、真木か、薪の意味ではないかという。別名コルククヌギともいうが、ヨーロッパのコルクガシほどではない。葉の裏には星状毛があり、白っぽく見える。殻斗だけでクヌギと区別するのは難しい。
サザンカ(タチカンツバキ) フェニックス
クロガネモチ 大噴水
サザンカ(タチカンツバキ)山茶花(立寒椿)はツバキ科。立寒椿は山茶花の園芸種。サザンカは日本の特産種で佐賀県千石山には天然記念物の純林があるということです。江戸時代以前は、ツバキは「カタシ」と呼ばれていたが、サザンカは、カタシより小型なので「ヒメカタシ」や「コカタシ」と呼ばれていた。それが元禄時代頃、中国でツバキを指す山茶花(さざんか)から転訛したものという(湯浅浩史博士)。因みにサザンカは横浜市の市木、フェニックスは宮崎県の県木、クロガネモチは福岡市の市木。
心字池の雪吊り イノモトソウの栄養葉
ヤブソテツ ツワブキ
イノモトソウ(井の許草)はウラボシ科。関東以西に分布する常緑多年生草本。井戸の近くなど水気のある所に生えるので「井の許草」といわれますが、市街地でも普通に見られます。中軸に翼があり、オオバノイノモトソウは翼が無いので区別がつきます。栄養葉は胞子葉より小さく、葉縁にまばらに鋸歯があり、葉全体が波打っています。胞子をつくる胞子葉は子孫を残すために、栄養を蓄えて立派な胞子をつくるべく体が大きいのでしょう。胞子葉は葉緑素があり、栄養も作りますので、栄養製造に特化した栄養葉は小さくなっているのでしょうか。