野楽力研究所

近くの自然で野楽力を高めましょう

高尾山・・・令和3年11月15日

 紅葉がテレビで紹介されていましたので、早速訪れました。6号路(14時までは登りの一方通行)を登り、高尾山頂からもみじ台へ。帰りは、3号路から高尾病院へ下る路。どちらも谷筋で陽が当たらず、紅葉は見ることができません。山頂ともみじ台で紅葉が綺麗でした。谷筋ではシダをたくさん観察することができました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=清滝(高尾山口)ケーブルカーのりば、中=洗心菩薩群、右=琵琶滝

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(↑上の写真・山頂付近)左=リンドウ、中=フユノハナワラビ、右=シラヤマギク

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(↑上の写真)左=高尾山頂、中=山頂からの富士山の眺め、右=山頂のビジターセンター

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(↑上の写真)左=もみじ台、中・右=もみじ台の紅葉

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(↑上の写真)左=ヤブソテツ、中・右=イワガネゼンマイ

 イワガネゼンマイ(岩が根発条)はホウライシダ科イワガネゼンマイ属。(ブログ『岡山理科大学』)によれば「北海道から九州、東アジアの森林の谷筋などに広く分布する常緑のシダ植物。同じ属によく似たイワガネソウがあるが、葉裏の葉脈がイワガネソウは網の目状になっているのとくらべ、イワガネゼンマイの葉裏の葉脈は、上の写真のように葉の縁まで平行脈になっている(一部翻案)。」この平行脈は、巻かれたゼンマイ(発条)と同じように平行になっているようですから、イワガネゼンマイと命名したわけが分かりますね。

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(↑上の写真)左=ホソバカナワラビ、中=リョウメンシダ、右=ジュウモンジシダ

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(↑上の写真)左=オオバノイノモトソウ、中=ヤマイタチシダ、右=キヨスミヒメワラビ

 キヨスミヒメワラビ(清澄姫蕨)はオシダ科キヨスミヒメワラビ属。別名シラガシダ(白髪羊歯)。高尾山では稀に6号路で見られます。今回は3号路で2株見られました。『牧野新日本植物図鑑』によると「関東南部以西の暖地の樹林下の割に明るくしかも湿気の多い所に生える常緑の多年生草本。根茎は直立し、数本の葉を束生するが葉は斜めに立って高さ40~70cm。2回羽状複葉、葉柄と中軸の上に鱗片を密生し、鱗片は、若いうちは白色半透明、この季節には黒ずんでいる。日本名の清澄姫蕨は千葉県清澄山で発見されたからである。白髪羊歯は白い鱗片が多いのを白髪にたとえている。(一部翻案)」とあります。ミドリヒメワラビ、ヒメワラビに似ているシダを見つけたら、注目したいです。

国立昭和記念公園・・・令和3年11月14日

 晩秋を迎え、空気は乾燥し爽やかな秋晴れの日が続いています。桜の葉はすっかり落葉し、イイギリの赤い実が青空に映えます。サザンカの花が今、咲き誇っています。木々の黄葉、紅葉が美しい。今日の昭和記念公園の自然の様子です。

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(↑上の写真)左=園内風景、中=イイギリの実、左=サネカズラ(ビナンカズラ)の実

 イイギリ(飯桐)はヤナギ科(いままではイイギリ科)イイギリ属。APG牧野植物図鑑などによると、「本州から琉球列島、台湾、中国に分布する落葉高木。樹皮は灰白色、枝は大きく放射状に開出、葉は長さ10~20cmで秋に黄葉する。花は晩春、たくさんの花が房状に集まって垂れ下がる。花弁は無く雌雄異株。果実は赤く美しい。大きな葉が昔、食器代わりに飯(おこわ)を包むのに使われたことから、イイギリ(飯桐)と名付けられた」という。

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(↑上の写真)左・中=サザンカ、右=ツワブキ

 サザンカ山茶花)はツバキ科ツバキ属。『APG牧野植物図鑑』などによると四国、九州、琉球列島の日当たりの良い山地に生える常緑小高木。若枝、葉柄、葉裏の脈上に細毛があるのが特徴。花は、野生では白色だが園芸種には各種ある。山茶花の漢字を当てるが、漢名ではない。湯浅浩史著『花おりおり」によると「サザンカの名は江戸時代以前には無い。元禄時代頃、中国でツバキを指す山茶花(さざんか)から転訛したもの。サザンカは日本の特産種。佐賀県の千石山には天然記念物の純林がある。江戸時代以前は材が硬い「カタシ」(ツバキ)より小型なので「ヒメカタシ」や「コカタシ」と呼ばれていた」という。江戸時代以前はサザンカは「ヒメカタシ」と呼ばれていたというのです。サザンカに遅れて咲くのがカンツバキ(寒椿)でこれは矮性(低い生垣など)。そのうち背の高いのが「タチカンツバキ(立寒椿)」。

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(↑上の写真)黄葉、左=イチョウメタセコイア、中・右=ハクウンボク 

 ハクウンボク白雲木)はエゴノキエゴノキ属。(APG牧野植物図鑑)などによると日本全国と朝鮮半島、中国の温帯に分布する落葉高木。葉は径10~20cmと大きな心臓形、裏面に白い細毛がある。エゴノキ科なので主芽、副芽があり、コブシに似た樹皮。樹形は、コブシは縦に伸びるが、ハクウンボクは横に枝を張る。落葉するまで丈夫な葉柄の中に主芽、副芽が保護されている。これを葉柄内芽といい、裸芽なので芽鱗が無く、芽=幼葉に細毛が生えている。葉柄が筒状になっているのがハクウンボクで、空隙がなく充実しているのがコブシ。参考までにプラタナスの葉柄はハクウンボクと同じく筒状になっている。花は晩春、エゴノキのような花を鈴なりにつける。和名白雲木は樹上に白い花が満開になった様子を白雲に見立てたものという。

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(↑上の写真)紅葉、左=オオモミジ、中=エビヅル、右=ニシキギ(枝に翼あり)

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(↑上の写真)園内風景寸描、左=こもれびの丘、中=ドラゴンの砂山、右=パンパスグラス(シロガネヨシ)

 

 

都立東大和公園・・・令和3年11月4日

 都立東大和公園は、狭山丘陵の東大和市内にあり、解説板によると昭和54年に開設された東京で最初の丘陵公園ということです。20haの広さがあり、ボランティアの方々のお陰で、萌芽更新も適宜行われ、薪炭林だった里山として保存されています。この時季、保護されているリンドウが立派に花開き、小春日和に恵まれた日向で、咲き誇っていました。ノコンギクが紺色鮮やかに咲き乱れる傍らでは、コウヤボウキの白い花がひっそり咲いています。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=公園入口、中=ノコンギク、右=コウヤボウキ

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(↑上の写真)どれもリンドウ

 リンドウ(竜胆)はリンドウ科リンドウ属。APG牧野植物図鑑Ⅱによると「本州、四国、九州の山や丘陵地に生える多年草。茎は中空で直立又は斜上、高さ20~90cm。」とあります。湯浅浩史著『花おりおり』には「高原の花のしんがりに咲く。清少納言も『異花(ことはな)どものみな霜枯れたるに、いと花やかなる色合いにて』と書く。野生の花は陽光を好み、日陰や曇天には開き切らない。リンドウの名は漢名の竜胆の音読みに由来。解釈には諸説あるが、根の苦さを竜の胆(きも)にたとえたとも。消化不良や食欲不振の薬に使う。」とあります。「茎は直立又は斜上」というのは上の写真・左が正にその通りですね。

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(↑上の写真)左=「ナラ枯れ」はじめたコナラ、中=カシノナガキクイムシに食害されたコナラの根元、右=コナラの実(やがて親木が枯れた日当たりでどんぐりは発芽し、親に代わって幼木が育っていくでしょう。)

 松枯れ病の後、ここ数年猛威を振るっているのがナラ枯れです。カシノナガキクイムシが運ぶナラ菌によって通水障害を起こし、水分がとれず木が枯死してしまう現象です。太い木がやられるようで、里山薪炭林として管理されていた時代は、太い木は萌芽更新されて元気のいい若い木が薪用、炭用として育てられていましたので、ナラ菌に対してそれなりの抵抗力があったようですが、里山を自然保護の観点から伐らないようになった自縄自縛の結果だったようです。安易に自然保護を叫ぶだけでは、自然保護にならない例と言えるでしょう。

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(↑上の写真)左=アカマツも見える園路、中=「アカマツハルゼミ」の解説板、右=市民によって保護されているアカマツの実生の苗木 

 ここの公園も松枯れ病マツノマダラカミキリによって拡散されるマツノザイセンチュウによりマツが枯れる病気)に襲われ、ほとんどのアカマツが姿を消してしまいましたが、現在、その実生が育ち、ボランティアによって保護育成されています。いずれ、ハルゼミの声を聞くことができるようになるのが楽しみですね。

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(↑上の写真)左=ハリガネワラビ、中=イノモトソウ、右=ヤブソテツ

片倉城跡公園・・・令和3年10月29日

 大分秋が深まってきました。木々がそれぞれの色づきで着飾り始めましたね。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=彫刻のある公園、中=ヤマハギ、右=ミゾソバ

 ヤマハギ(山萩)はマメ科ハギ属。全国の山野の草地に生える落葉低木。高さ2m位。多数分枝する。ハギは生え芽(はえき)という意味で古い株から芽を出すところから言うそうです。従って、昔はハギを芽子と書いたということです。萩という漢字は国字で、本種が秋咲きなことから草冠に秋と書いてハギと読ませたそうで、秋の七草の先頭に置かれています。

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(↑上の写真)左=トネアザミ、中=セイタカアワダチソウ、右=水車小屋

神奈川県立東高根森林公園・・・令和3年10月28日

 ツワブキ(石蕗)が、新しい花の少ないこの時季に、あちこちで黄色い見事な花を咲かせていました。シロヨメナも見事でした。カシワバハグマやコウヤボウキの花も咲いています。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=パークセンター、中=ツワブキ、右=シロヨメナ

 ツワブキ(石蕗)はキク科ツワブキ属。本州、四国、九州に自生し、海岸付近に生える多年草。(澤田ふじ子著「天涯の花」より)<尾張徳川家の京屋敷の雨森平蔵の口利きで新しい長屋に住むことになった>かれ(未生流の山村内蔵助)は石蕗の花に向かい、なんとなく手を合わせた。花は自分の志であり、石蕗は亡妻蕗の霊ではないかと思われてきたからだ。蕗と石蕗の名の相似性がそう考えさせるのだろう。日陰をえらんで咲くこの花の寂しさが、どこか蕗の面影を連想させる。<複雑な家庭環境に育った山村内蔵助が苦難の先に自分の生きる道を花に見つけて未生斎広甫の弟子となり、未生斎一甫を名乗って未生流を究めるべく旅先で斃れるという運命に翻弄される人生を歩んだ人の話でしたね。>

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(↑上の写真)左=カシワバハグマ、中=コウヤボウキ、右=シュウメイギク

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(↑上の写真)左=セキヤノアキチョウジ、中=トネアザミ、右=四阿風景

 セキヤノアキチョウジ(関屋秋丁字)シソ科ヤマハッカ属。日本全国の山野に生える多年草。アキチョウジは花冠が高坏形で筒部は細く、横から見ると丁の字に似ていて、丁字形(牧野植物図鑑では「丁子形」、ウィキペディアでは「丁字形」)の花を秋に開くの意味ということですが、セキヤは、地名らしいですが場所は不明ということです。

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(↑上の写真)紅葉3題 左=カツラ、中=コマユミ、右=ハクモクレン 

 カツラ(桂)はカツラ科カツラ属。日本各地の山地に生える水辺を好む落葉大高木。白亜紀の生き残りと言われ、中国四川省と日本で生き残ったそうです。春咲く花は、花とも言えない原始的な裸花といわれる花で、花びらや萼のない雌雄異株。葉は対生ですが、互生、3輪生のものもあるようです。黄葉した葉は、磯辺焼の醤油に香りがし、抹香の原料にもなるようです。この季節、公園に磯辺焼の香りが漂っていたら、黄葉したカツラの木があるはずです。なお、中国では、カツラ(桂)はモクセイのことのようです。コマユミ(小真弓)はニシキギニシキギ属。各地の山野に生える落葉低木。ニシキギによく似ていて、分布、生育地とも同じ。枝にコルク質の翼を持たないことが唯一の区別点です。

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(↑上の写真)左=ムラサキシキブ、中=ヤブミョウガ、右=イヌビユ

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(↑上の写真)左=セイタカアワダチソウ、中=アセビ、右=キブシ

 セイタカアワダチソウ(背高泡立草)はキク科アキノキリンソウ属。北アメリカ原産で明治30年頃に渡来した帰化植物。各地の土堤や荒地に生える多年草で、第2次大戦後頃から急に多くなった。長い根茎があり群落をつくるが同一場所には長続きしない。花は秋、虫媒花であり、花粉はほとんど放出しないことが分かり、花粉症の原因植物ではないことになりました。和名は丈の高いアワダチソウの意。アワダチソウ(泡立草)はアキノキリンソウの別名。(古川真人著「背高泡立草」より)(芥川賞受賞の言葉)「どうにもじれったく、気づけば起き上がって声のする方へ歩いていけば、納屋に辿り着いていた。話していたのは草たちだった。」に象徴されるように実家の空き家の草刈りをする親戚の者たちが、戦前戦後の生活の関わり合いを織りまぜた話でしたね。「主人公達の帰る車の中で草刈りの写真を携帯で見ながら、会話が弾む。 『今日刈った草、何種類くらいあったかな』って美穂は『ドクダミ』『虎杖(イタドリ)』『背高泡立草(セイタカワダチソウ)」はサイトで表示させると、背高泡立草の学名は『ソリダゴ・カナデンシス(ソリダコ・アルティシマ)』この長い学名はどこの言葉で、どういった意味があるのだろうか。殊に、二つあるらしいその名前のどちらにも付いているソリダコには、何の意味があるのか、奈美(娘)は検索しようとしたが、止めて携帯電話を仕舞うと目を閉じた。その間にも美穂(母)は草の名前を挙げていく。『菅(すげ)』『葛(くず)』、島の者がそれぞれ『ギシギシにガネブって呼びよる』蓚(スイバ)と蝦蔓(エビヅル)が葛の葉の間からわずかに顔をのぞかせる。」<母を中心に草との戯れを愉しむ場面でしたね。因みにソリダゴ・カナデンシスというのは学名Solidago canadensisのことでカナダアキノキリンソウのこと。北アメリカ原産の背高泡立草に近縁の植物で観賞用として注目され、様々な園芸品種が作出されているそうです。ソリダゴとは属名で、ソリダゴ・セロティナ(オオアワダチソウ)やソリダゴ・カナデンシス(アキノキリンソウ)など、属全体を指すため花店ではアキノキリンソウ・オオアワダチソウの名でも出回っているそうです。>  

 

野川公園自然観察園・・・令和3年10月23日

 久し振りの秋空が広がりました。野川公園自然観察園に秋の深まりを感じてきました。ビナンカズラ(サネカズラ)やガマズミの実は、真っ赤に熟しています。シュウメイギク、ユウガギク、シラヤマギクも最後の輝きを見せていました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=自然観察園入り口、中=サネカズラ(別名:ビナンカズラ)、右=ガマズミ

 サネカズラ(実葛・真葛)は、マツブサ科サネカズラ属。関東から南の山地に生える常緑つる性木本。別名はビナンカズラ(美男葛)、美男葛は、つるを水に浸し、その粘液で鬢づけし、光沢を出し、男らしさを演出したものです。ビンツケカズラ(鬢付葛)ともいわれます。(三島由紀夫著「豊饒の海1:春の雪」に)<聡子が母親の伯爵夫人と奈良の月修寺の門跡に春の宴のお礼がてら会いに参詣した折、この時、すでに聡子は剃髪することを決意していました。>「道野辺の草紅葉さえ乏しく、西の大根畑や東の竹藪の青さばかりが目立った。大根畑のひしめく緑の煩瑣な葉は、日に透かした影を重ねていた。やがて西側に沼を隔てる茶垣の一連がはじまったが、赤い実をつけた美男葛が絡まる垣の上から、大きな沼の澱みが見られた。ここをすぎると、道はたちまち暗み、立ち並ぶ老杉のかげへ入った。<この景色の陰翳が聡子の気持ちをぐんと深めていったに違いありませんね。美男葛の赤い実は聡子の目を強く射ていたはずです。> 

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(↑上の写真)左=シュウメイギク、中=ユウガギク、右=シラヤマギク 

 石坂洋次郎著「山のかなたに」に出てくる白い野菊はユウガギクでしょうか?ユウガギク(柚香菊)はキク科シオン属。近畿地方以北の日当たりのよい山野に生える多年草。上部で斜めに大きく開出するように枝を分ける。「山のかなた」より(志村高一は、裁縫の先生をしている井上美佐子の父の連隊の部下で、その父から、美佐子を嫁にもらってほしいと言われていた。美佐子にはその気はない。そのうち、志村は、美佐子の裁縫の生徒の林タケ子が好きになる。)間もなく、丘の上に、志村とタケ子が姿を現した。タケ子はピンクのワンピースの上に、エビ茶の羅紗地の上衣をはおり、途中で摘んだらしい白い野菊を髪にさしていた。手にも一本もっており、のびのびした、楽しそうな顔をしている。それの寄り添う志村は、見るからに窮屈そうな恰好をしていた。「いい見晴らしねえ。せいせいするわ」と、タケ子は手にした野菊をクルクルまわしながら、街の方を眺めて、うっとりとつぶやいた。「そうです。せいせいします」と、志村は重苦しそうに言った。「ホラ、志村さん」と、タケ子は男の胸に片手を当てて、野菊で街の方をさしながら、「あの、屋根のピカピカ光ってる建物、あれなんだったかしら…?」「あれは・・・病院でしょう」「そお。あんな方角かしら・・・ああ、この花、志村さんも胸につけてよ」タケ子は志村にすれすれに寄り添って、背広の襟の穴に、長い茎をちぎった野菊をさしてやった。少し赤味がかった髪の毛に日光がさして、毛の一筋々々に若い女の生命が光っているようだった。ダラリと両手を垂れて、髪の毛で鼻先をくすぐられている志村は、いきなり指揮刀を抜いて(そんなものは、ありはしなかったが)「嫁になれェ」と、号令を下したい衝動に駆られた。(しかし、彼はぐっと堪えて、下の窪地に坐ろう、と誘う。女性は解放されて積極的になり、男性は自信を失って、女性に煽られる戦後すぐの時代背景が偲ばれますね。この小説の野菊は花柄が丈夫で長く、襟の穴や髪に差し込める長さが十分ある白い野菊というのですからユウガギクと考えましたが、どうでしょうか。)

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(↑上の写真)左=ミズヒキ、中=ギンミズヒキ、右=ノダケ

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(↑上の写真)左=ゲンノショウコ、中=ヤマハッカ、右=イヌタデ

 ゲンノショウコ(現の証拠)はフウロソウ科フウロソウ属。別名ミコシグサ。日本の山野に普通に生える多年草。花は夏から秋に咲き、東日本では白色に近い淡紫色、西日本では紅紫色で径1~1,5cm。この茎葉を陰干しにして煎じて飲むと下痢がすぐに治まるという効果が現れるので「現に証拠が現れる」「現の証拠」ということで「ゲンノショウコ」といわれる。薬用成分はゲラニインと呼ばれるタンニンの一種。紅花、白花のどちらでも薬効には差がないという。茶としても飲用する。飲み過ぎても便秘を引き起こしたりせず、優秀な整腸生薬であることから、「医者いらず」ともいわれている。秋に種子を飛散させた後で果柄を立てた様が神輿のように見えることから、ミコシグサ(神輿草)とも呼ばれます。

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(↑上の写真)左=ヤマホトトギス、中=トネアザミ、右=ツリフネソウ

  アザミ(薊)はキク科アザミ属の植物全体を指すので、アザミという名の植物は無いそうです。トネアザミ(利根薊)は群馬県利根に因んだ命名で、関東地方北部から中部地方にかけての太平洋側の山地帯や低地の林縁に生える多年草。花期は夏から秋。写真のように頭花は紅紫色で総状につき、下向き、花柄が短いのが特徴です。(川端康成著の官能的な小説「眠れる美女」に)京都に着いた江口とその娘とは朝早く竹林の道を歩いた。竹の葉は朝日を受けて銀色に輝きそよいでいた。竹林の片側の畔には、あざみと露草とが咲いていた。そういう道が浮かんでくる。竹林の道を過ぎて、清い流れを遡ってゆくと、滝がとうとうと落ちていて、日の光にきらめくしぶきを上げ、しぶきの中に裸身の娘が立っている。そんなことは、ありはしなかったのだが、江口老人にはいつからかあったものと思われる。<有閑老人の夢想を満たすに十分な設定でした。あざみは、紅紫色の可愛い花ですが、触るには刺に注意しなければなりませんね。露草の青紫の楚々とした花の様子は、有閑老人好みの娘には相応しい雰囲気を醸していましたね。>

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(↑上の写真)左=イガオナモミ、中=スズメウリ、右=コムラサキ

 イガオナモミ(毬葈耳、毬雄奈毛美、毬雄菜揉み)はキク科オナモミ属。原産地ははっきり判らないようですが、APG牧野植物図鑑Ⅱによると南アメリカ原産とみられるとあります。大形の帰化植物一年草草本。高さ1,5m位。葉は互生し、全体が卵形、基部は深い心形で鋸歯縁がある。花序は雌雄が別で、枝端や葉腋に群生する。雌花序は刺の多い楕円形で、刺は鋭く、先端は鉤状に曲がる。熟時には集合果全体が黄色帯びた褐色を呈し、和名のイガはとげの意ということです。

東京薬用植物園・・・令和3年10月8日

  久し振りに薬用植物園を訪れました。今日の様子です。

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(↑上の写真)左=スギモリケイトウ、右=シオン

 スギモリケイトウはすごく目立つ花です。名前の由来は不明だそうです。ケイトウとつくのですぐ納得してしまいましたが、科としてはヒユ科の植物で属はケイトウ属。中の写真から学名などを調べてみました。アマランサスはヒユ科ヒユ属の総称、ハイブリディアスは異種の交配による雑種(いわゆるハイブリッド種)、var(ヴァール、ヴァリエタスの略)は変種、雑種ということで、パ二キュラータスはオイランソウの仲間のこと(アマランサスはヒユ科ヒユ属、クルエンタスはナデシコ科の仲間なので両者由来の交配種ということでしょう)

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(↑上の写真)左・中=ヤマホトトギス、右=ザクロ

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(↑上の写真)左=フジバカマ、中=ノゲイトウ、右=オオケタデ

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(↑上の写真)左=ワタ(綿花)、中=シュウメイギク、右=ヤマトリカブト

  シュウメイギク秋明菊)はキンポウゲ科イチリンソウ属。菊とつくのでキク科と思いきやキンポウゲ科です。中国原産で室町時代に中国に渡った修行僧が持ち帰ったものといわれます。花弁のように見えるのは萼片で本来の花弁は退化しているそうで、中央に多数密集しているのが雄しべと雌しべ。近縁のアネモネなどと同様、全草有毒のプロトアネモニンを含み、乳液に触れるとかぶれを引き起こすことがあるそうです。

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(↑上の写真)左=キバナアキギリ、中=ガマズミ、右=ウメモドキ

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(↑上の写真)左=タマスダレ、中=キチジョウソウ、右=タヌキマメ

 キチジョウソウ(吉祥草)はキジカクシ科キチジョウソウ属。関東以西、四国、九州の樹林内の木陰に生える常緑多年草。花は秋から晩秋に咲き、冬に赤い実(液果)をつけます。植えている家に吉事があると花開くという伝説により、吉祥草といわれるそうで、縁起の佳い花といわれます。庭にナンテン南天=難転)、吉祥草、オモト(万年青)を植えておくと一年中いいことだらけになるそうです。別名観音草ともいわれますが、ミズバショウの別称でもあるようでミズバショウを観音草というのは相応しいですが、吉祥草を観音草といのはイマイチの感じですね。