昨日の天候に打って変わってすっきり晴れ上がった青空の下、都立小金井公園の自然観察です。江戸東京たてもの園は休園中で中には入れませんでした。サトザクラと言われる八重桜がちょうど盛りを越えたところでした。足元にはカントウタンポポが花盛りです。今日の様子です。
(↑上の写真八重桜)左=普賢象、中=関山、右=鬱金
八重桜(バラ科サクラ属)はオオシマザクラを母種として生まれた日本原産の栽培品種のサトザクラ(=八重桜)群のサクラで写真のものはその仲間だそうです。夏目漱石著『こころ』に(主人公私は苦しんでいた論文をようやく書き上げた。)「私の自由になったのは、八重桜の散った枝にいつしか青い葉が霞のように伸び始めた初夏の季節であった。私は籠から抜け出した小鳥の心をもって、広い天地を一目に見渡しながら、自由に羽搏きをした。私はすぐ先生の家へ行った。・・・」(八重桜の青い葉が、隠されていた苞葉を破り「それ!」と伸び出した気持ちと論文を書き上げた私の解放感がぴったり合いましたね。八重桜と主人公私の気持ちとの一体感を感じました。)<一部翻案>
(↑上の写真)左=ベニバナトキワマンサク、中と右=ボダイジュ
ボダイジュ(菩提樹)はアオイ科シナノキ属(以前はシナノキ科シナノキ属)。日本で見られる菩提樹は中国中部原産の落葉高木。花序の柄にはへら形の葉状の苞が1個あり、その先に8ミリ前後の球形の果実を7~8個つけます。このへら形の苞と果実の付き方が特徴的です。上の写真のように花の時季になっても、まだ昨年の果実がついていたりします。自然の樹形は、菩提樹らしくとてもきれいです。湯浅浩史文『花おりおり』によると「菩提樹には混乱が見られる。釈迦が悟りを開いたのはインドボダイジュの下。それは、クワ科の熱帯樹。一方、日本の寺院で見かける菩提樹は、中国原産でシナノキ科(→現在アオイ科)。葉がハート形で、先が尖る特色から代用とされたようだ。シューベルトの「冬の旅」の菩提樹は欧州産シナノキの類の雑種」ということです。神代植物公園大温室には、インドボダイジュが「仏教三大聖樹」の一つとして植えられています。
(↑上の写真)左=フジ、中=ニワトコ、右=ヤマグワ
(↑上の写真)左=ヘビイチゴ、中=カントウタンポポ、右=カタバミ
(↑上の写真)左=ニリンソウ、中=カラスビシャク、右=キランソウ
カラスビシャク(烏柄杓)はサトイモ科ハンゲ属。『APG牧野植物図鑑』によると日本各地の田畑に生える多年草。球茎から1~2枚の葉を出し、葉柄の途中にムカゴをつける。葉身は3小葉。初夏、花茎の先にミズバショウをほっそりさせたような苞に包まれた肉穂花序の花をつける。駆除の困難な雑草という。田中修著『花の顔』によると苞に包まれた肉穂花序の花穂は、下の方には雌花がぎっしりつき、間隔をあけて上部には雄花の花穂がついている。最初は雌花だけが開花し、そこに他の花の花粉をつけた1mmほどのハエが訪れ、他家受粉するが、し終わり、柱頭が枯れるまで逃げ場がないようにして囲う。受粉が完了すると苞の下部にハエの逃げ孔を開き、解放する。その時、上部の雄花が開花し、ハエを招き、花粉まみれにして、他の花の他家受粉を援けるという。それぞれ子孫繁栄のための方策があるようですね。(いずれも一部翻案)
(↑上の写真)左=ムラサキサギゴケ、中=オオイヌノフグリ、右=オニノゲシ
(↑上の写真)左=ヤエムグラ、中=アメリカフウロ、右=ウラジロチチコグサ
(↑上の写真)青空に新緑が映える広々とした小金井公園